ソウルフルで生々しい唄の魅力
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「あなたを愛するのが間違ってるというのなら、私は正しくなんかなりたくない」というタイトルの曲から始まるアルバム「Caught Up (愛のとりこ)」。30年前にこの曲を初めて聞いて、ミリー・ジャクソンのソウルフルでエモーショナルな唄声に、まさにとりこになってしまった。このアルバムは不倫をコンセプトに、A面は愛人の立場から、B面は本妻の立場から、それぞれ数曲をインターバルなしで台詞をまじえて唄いつなげるという、ドラマチックな構成になっていた。小説でも読むように、感情移入しながら聴き入ってしまう傑作アルバムだ。そして1年後に出たアルバム「Still Caught Up(続・愛のとりこ)」。今度はA面が本妻、B面が愛人という構成で同じように曲が続き、最後に「I Still Love You (You Still Love Me)」を切々と唄い上げる。その悲痛な結末に、何度聴いても背筋に寒気を覚えてしまう。この2枚のアルバムを1枚にまとめたのが、本CDだ。ミリー・ジャクソンの唄の魅力を、生々しい愛憎のドラマにのせて一気に味わえる、密度の濃い内容となっている。