経済の背景にある思想に注目した本
★★★★☆
西側諸国の自由主義経済の父である「アダム・スミス」。
そして、中国に市場経済を導入して中国経済を発展に導いた「トウ小平」。
(※トウショウヘイ。トウの字は機種依存文字のため、カナ表記としました。)
一見、同じように経済発展に貢献している両名。
この本では両名の思想に着目し、「思想の相違がもたらす結果」について考えてもらおうという趣旨の本だろうと思います。
前者は、「神の望まれる繁栄」の実現という考えが根底にあります。
各人が創意工夫し自由競争していく中で、「神の見えざる手」が働くという思想が根底にあります。
また、軍事費の重要性、マルクス経済の誤り、中国経済の崩壊タイミング、経済と宗教、デフレ経済の危険性等、様々な内容について言及しています。
後者は、国家が全ての基準と考え、「国家が強くなる為の手段」としての経済発展を考え、「軍事力強化のための手段」としての経済強化を考えています。
両者では、手段と目的が逆転している点が印象的です。
現実に中国は経済発展と共に軍事力増強を強力に推進しており、この本に書かれている内容は単なる空想ではなく、現実に対する警告を込めた内容になっていると思います。
どんな本でもそうですが、この本がお勧めかどうかは、読む人次第だと思います。
特にこの本は、「トウ小平」との対話の内容に反感を持つ人がいそうですので、過去に「霊言」シリーズに拒否感を覚えた人は、読まない方が良いでしょう。
この本がお勧めな人は、、、
経済と思想、経済と軍事、経済と宗教等、経済と他との関わりについて興味がある人、
アダム・スミスに興味がある人、
トウ小平に興味がある人で、冷静かつ客観的に見られる人、
中国の経済発展の背景にある思想に興味がある人、
市場経済を導入し自由化の気配のある中国で、なぜ天安門に代表される事件が起きるのかに興味ある人、
、、、あたりかと思います。
なお、一連の霊言シリーズに興味があり、かつ、純粋に「経済」に興味がある方は、
この本よりも、「未来創造の経済学(ハイエク/ケインズ/シュンペーター)」をお勧めします。
人に貸しているのでレビューは書けませんが、非常に面白いです。
マルクスとアダム・スミスの発想の違い
★★★★★
アダム・スミスとカール・マルクス。
青は、藍よりいでて・・・ということばもあるが、
アダム・スミスを学びながら、カール・マルクスは、
アダム・スミスとは、別の結論へと導いた。
アダム・スミスは、労働を中心に物事を考えたことから考えて、
労働価値説の基礎を築いたとされているが、
アダム・スミスのレセフェール(自由放任主義)と
マルクスの労働価値を労働力で計る考え方は、
相容れない。
なぜ、この差が生まれてくるか。
アダム・スミスは、このように看破している。
「重工業をつくっていくレベルなら、
(中略)ある程度いけるのですが、
次の段階、要するに高度経済成長に入ってきたときには、それは無理になります。
なぜ、私の時代に、レセフェールということを言いえたかというと、
貿易など、商業的なものを、かなり念頭においていたからです。
私の生きた時代は、一七〇〇年代だけれども、
私よりあとの時代のマルクスは、意外にも炭鉱労働者の肉体労働を念頭に考えていて、
(中略)肉体労働を経済原理の基礎にしているんです。
私の方は、いちおう、貿易などを念頭においているため、
ある意味で、第三次産業的なサービス産業の世界が念頭にありました。」
肉体労働を中心に、「剰余価値説」を打ち出したマルクスと、
商業や貿易を念頭に、第三次産業的なサービス業の世界をもとに
「レセフェール」を打ち出したアダム・スミス。
この「第三次産業の勃興」が
ある意味、マルクスの理論を打ちくだいた、といってもいいだろう。
サービス業においては、
「高付加価値なものは、経済的に高く評価される」のが当然であり、
労働力が単純に価値になるという労働価値説が成りたたないからである。
ある意味、マルクスを葬ったのは、
時代そのものであったといえるだろうか。
日本経済の見方が学べる本。
★★★★★
スパッとした切り口で日本経済の誤謬を指摘し語り下ろしている。今時はどの雑誌も経済誌に至るまで、ある言葉を表題にし、それで商売をしようとする。グローバルスタンダード、二千年問題、百年に一度の不況等。自社の売上が目的で書かれているものばかりの中で、本当に日本の向かうべき方途を示していると思う。
そんなに霊言がいいですか?
★☆☆☆☆
自らの正当性を一方的に主張しているだけの内容です。
一般人には全く、オススメできません。