キース、自らを始動する
★★★★★
1971年7月15・16日、ニューヨーク、アトランティック・スタジオにて録音。パーソナルはキースにデューイ・レッドマン(ts)・チャーリィ・ヘイデン(b)・ポール・モチアン(ds)。キースはピアノだけでなくソプラノ・サックスとフルートでデューイ・レッドマンのテナーと勝負する。
このアルバムの後、1971年11月10日が『フェイシング・ユー』そして、この少し前5月が『ルータ・アンド・ダイチャ』である。キースがマイルスの元を離れたのは1970年5月21日の『Directions』が最後なので、約1年の充電期間の後、自らの音楽創造をスタートさせた時期に当たる。つまり、マンフレート・アイヒャーはこの時期のキースの演奏に注目し、ECMへ引っ張ったことになる。それだけこのアルバムは素晴らしいということでもある。
このアルバムに欠けているモノ、それはヤン・エリック・コングスハウクの録音技術だけだ。今回リマスタされているが、それでもその差は歴然である。キースの初期の傑作でありながら、何故かマンフレート・アイヒャーの偉大さを感じてしまうアルバムだ。
Birth、流星と姉妹盤。オーネットコールマン的明るい雰囲気
★★★★☆
なにしろ1曲目Gypcy Mothである。何故流星に入らなかったのか、不思議なくらいかっこいいゴスペル/カントリーロック系のこの時期のキースの殺し技炸裂。こういう時はしつこいようだが断然ベース:ヘイデンであるべきだ。モチアンのベッチャリしたドラムスもデジョネットよりブルースを感じる(のはワタクシだけ?まぁいいや)。もう一つのポイントはキースの軽妙かつ痛快なピアノソロPardon My Rags。こういったモロラグタイムスタイルのソロは滅多無く、それだけでも聴くべき価値ありだ。その他の曲はキースのピアノ度がぐっと下がるものの、オーネットな雰囲気満点の躁病的明るいフリージャズ。一聴、「なんじゃあ、こりゃあ!」と面食らうがBirthの収録曲群ほどエスニック・不気味度は強くなく慣れると聴きやすい。
残り物には福が.........、あんまり無かった!
★★☆☆☆
BIRTH、The Mourning Of A Starと同じセッションからの第3弾。71年の録音から5年経って、ちょうどアメリカンカルテットが解散する頃に発売されたそうな。そういうわけで、セッションの残り物ちゃうか?と思うのが人情ですが、まさしくそのとおり。
1曲目のGypsy Mothなんかはまだこんないい曲が残ってか!てぇくらいのかっこいいもんだし、3曲目Pardon My Ragsは短いがキースのソロ。サムウエアビフォーのラグシリーズの流れでホンキートンクなピアノが楽しめます。.....が、その他はちょっとキツイかも。リズムずたずた、(もちろん意図的なんでしょうけど)のフリージャズか民族系チャルメラの世界。ここで言っておきたいのだが、どうしてECMだとかっこいいのに、他のレーベルでやると民族系がチャルメラになっちゃうんでしょ?それにまぁ、短い。最後の6・7は同じ曲のヴァージョン違いだし、....キースのピアノ弾かな度も高い。どうしても興味がある人だけでよいでしょう。