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願望機

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 群像社
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暴力・金・女房。 ★★★★☆
『願望機』について。

『路傍のピクニック』同様、主人公の「ガイド」がワル。
作家と教授を、思い切り叩きのめすシーンがある。
作家のボディに一発。崩れた所で、髪を掴んで、往復ビンタ。
後ろから、止めようとした教授に、振り向く事も無くエルヴォーを
顔面に直撃させる。教授の眼鏡が吹き飛ぶ。

ラスト近くで、三人がゾーンから戻り、軽食堂でビールを飲んでいる。
「ガイド」が、もう一杯ずつ注文して作家と教授に奢る、と言う。
作家が出版社から前借して、自分が支払う、と言うが、「ガイド」は、
女房に電話して、家にヘソクリしてある10ルーブルを
持ってこさせる。その10ルーブルは、彼等の「呪われて生まれてきた娘」
マトリューシュカの治療費として、女房が貯めていたものだった。
女房が10ルーブルを持って軽食堂に現われ、一緒に加わる。

女房と一緒に軽食堂のテーブルを立って、帰る時、
「ストーカー」は言う。

「さしあたっては、これだけだ、
おれが手に入れたものは...。」

「ゾーンでは、皆が、自分の望むものを手に入れる」か。

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『霊薬』について。

芝居がかった大袈裟すぎる台詞の遣り取りと
舞台演劇的な「いかにもわざとらしい」ト書き。
チェホフの伝統を継いでいる感が有る。
『願望機』の原作『路傍のピクニック』のドストエフスキイ的な
粘着質の「高密度の書き込み捲くり」と比べると
ストルガツキイ兄弟の「芸の幅広さ」が判る。
「死と不死」の間に立たされたトルストイ的な人物の
主人公だが、単なる「純朴なるヒューマニスト」ではなく、
他の登場人物達よりも、更に一枚、上手。
社会主義ソヴィエトをしたたかに、生き抜く
自分流の「処世術」を身に付けた現代人振りは、
作家兄弟が自分達の姿を投影したものかも知れない。
ラストは、恐らく、芥川龍之介の『戯作三昧』。
「遊びをせんとや生まれけむ」か。
或いは「良く学び、良く遊べ。」
もうひとつのストーカー ★★★★☆
『願望機』は、ソヴィエトの映像詩人アンドレイ・タルコフスキーの映画「ストーカー(СТАЛКЕР)」の創作仮定で産まれたボツシナリオのひとつである。

何故本書が『ボツ』になったのかは巻末の解説を読んで頂ければ分かるだろうと思う。それは、ボツ=駄作というわけではない事を示している。一言でいえば本書は『映像化されなかったもう1つのストーカー』なのである。映画シナリオという事もあって、よみごたえという部分ではモノタリナイと感じる方もいるかもしれない。だが、本書はストルガツキイ信奉者が、タルコフスキーに出会うきっかけ・・・あるいはタルコフスキー狂信者がストルガツキイにであうための入門書になりうるものだと思う。

個人的には、併録されている映画シナリオ『スプーン5杯の霊薬』の存在が本書の存在価値を支えている気もする。ソヴィエトでは映画化されたとの噂もあるが、残念ながらお目にかかったことはまだない。あわよくば僕が映画化しちゃおうかなあぁと思ったする程、興味深いシナリオである。

アンドレイ・タルコフスキー「ストーカー」のファンであれば購入して損はないでしょう。