何故本書が『ボツ』になったのかは巻末の解説を読んで頂ければ分かるだろうと思う。それは、ボツ=駄作というわけではない事を示している。一言でいえば本書は『映像化されなかったもう1つのストーカー』なのである。映画シナリオという事もあって、よみごたえという部分ではモノタリナイと感じる方もいるかもしれない。だが、本書はストルガツキイ信奉者が、タルコフスキーに出会うきっかけ・・・あるいはタルコフスキー狂信者がストルガツキイにであうための入門書になりうるものだと思う。
個人的には、併録されている映画シナリオ『スプーン5杯の霊薬』の存在が本書の存在価値を支えている気もする。ソヴィエトでは映画化されたとの噂もあるが、残念ながらお目にかかったことはまだない。あわよくば僕が映画化しちゃおうかなあぁと思ったする程、興味深いシナリオである。
アンドレイ・タルコフスキー「ストーカー」のファンであれば購入して損はないでしょう。