ベートーヴェン中期弦楽四重奏曲最初の二作品で、ここから初期弦楽四重奏曲のようなハイドンやモーツァルトの作風から脱して、ベートーヴェンは独自のスタイルを築いたとされる。
第７番・第８番とも力強さや華やかさに欠けるため、きちんと音に向き合わないと、ただ地味で渋いだけの音楽に聴こえるかもしれない。
第７番は、第２楽章が骨太のタッチで描かれ、第３楽章は悲愴的に美しい。
より興味深いのは第８番で、第２楽章は安らぎがあたえられるかと思えば、暗い迷路を歩くような曲調に暗転し、またそれが払拭されるといった、大人しい曲のなかに、変容して極まりない人の心を描いたような音楽である。対して、第３楽章・第４楽章は軽やかでリズミカルな曲であり、まるで第２楽章を補償しているかのようだ。
これら二曲、特に第８番は、真剣に耳を傾ければ、必ず多くのことを語りかけてくれるだろう。
第７番は1979年4月の、第８番は1978年8月と1979年6月の録音である。