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乱歩おじさん―江戸川乱歩論

価格: ¥2,345
カテゴリ: ハードカバー
ブランド: 晶文社
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乱歩研究・影の立役者の傑作評論 ★★★★★
若き日の新保博久・山前譲は乱歩邸土蔵蔵書のデータを採取するよう声を掛けられる。そこから両氏は幾つもの成果となる乱歩本を刊行するに至った。その素晴らしい乱歩研究の源はこの松村氏の存在があってこそ。

自身の随筆で「ミステリ中毒の親戚の少年」と書いているように、乱歩は祖母平井きくの妹の孫にあたる少年時代の著者を探偵小説の世界に誘う。その後外務省勤務ながら作家・評論家として松村氏は成人する。
91年の時点で判明していた乱歩小説(長編・短編・少年もの全作)と随筆集、更に連作・代作まで、1作ごと時系列に親族ならではの滋味を湛えた回想と時には厳しい意見をも交えた本書は遺作となる珠玉の評論。

■ポーを鼻祖とする独創的トリックの開発を目標に探偵小説家になった筈なのに、デビュー時の「二銭銅貨」「一枚の切符」にて既に乱歩はこの路線に絶望したのでは?という見解、
■低潮といわれる時期においても「目羅博士」や「電人M」のように突然良作を生む乱歩は一筋縄ではいかない事、
■ミステリーを書くにおいて最も大切な事を著者が乱歩に尋ねると、トリックやアイデアではなく「まず文章だね。」との答えが返ってきた事、等々。

それまでの定説的な乱歩批評を無闇に引用せず、独自の印象で見た乱歩像を捉えている。現在乱歩研究はあらゆる方面に進化しているが、今でも本書が指標となっている点が多いのに気付かされる。
私は特に、謎が多い乱歩の弟平井蒼太にも触れた第8章の「代作問題について」が面白かった。

『貼雑年譜完全版』や光文社乱歩全集の刊行を見ることなく、92年松村氏は亡くなられた。
もう1冊の労作、フランス・ミステリー評論集『怪盗対名探偵』と本書を知らずして探偵小説ファンにあらず。今ならまだ入手できるので絶版になる前に未読の方は読ムベシ。