最高の美にただただ感動する
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川端文学の地下を走り、表に顕れた美の鉱脈を三部構成で本書は編まれている。
まず、個々の人間のあり方から出発して、国家や人世界のあるべき姿に及んでいるもの。
「この世は一つのものでございます。万物が犠牲になり合って形作ってゐる一つのものでございます」(『犠牲の花嫁』)その自己放下や犠牲的精神の美を体現するものとして、本書は目を奪うばかりの「耀貝螺鈿茶器」の美術品を紹介している。
次に、書画、焼き物など川端が心眼で選び蒐集した美術品の種々雑多なコレクションである。
東山魁夷の風景画連作シリーズ「京洛四季」の一つ名作「北山初雪」が紹介されている。
そして、個性的でありつつ他のもの全てとの相互交流の中で交響し練磨されたもの。
この文豪をめぐる八人の作家、志賀直哉・菊池寛・芥川龍之介・横光利一・小林英雄・太宰治・谷崎潤一郎・三島由紀夫との華麗な交流が紹介されている。
映画では海を越えて魅了する人間探求の物語「眠れる美女」が刺激的に紹介されている。
日本人初のノーベル文学賞作家川端康成の選んだ美がワイド版を得て本書に結晶されている。