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「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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同性愛嫌悪の問題 ★★★☆☆
研究の着眼点は悪くない。しかし、本書の最大の問題点は、本書が批判している京都大学の伊藤公雄氏による男性学と同様に、近年クイア・スタディーズが明らかにした男性のホモソーシャリティ(イヴ・K・セジウィック クローゼットの認識論―セクシュアリティの20世紀)と同性愛嫌悪をめぐる諸問題を完全に無視している点にある。おそらく、執筆者は全員が「男性異性愛者」であろう。その意味では、ジェンダー研究の保守反動と言われてもしかたのない本である。
男らしさの使い方 ★★★★★
面白い論集である。フェミニズムの視線に影響されつつ既存の「男性」像からの脱却を目指した男性学が、しかし「男らしさ」を一挙に切捨て「自分らしさ」へと一足飛びに進もうとした先に隘路にはまってしまった不幸を反省し、むしろ、現在では多様な男性による多様な展開を遂げている「男らしさ」の、より「きもちよい」使い方を模索する。各自の調査研究から導き出される提言がなかなか意義深くて参考になる。
いずれも実証(エスノグラフィ、インタビュー、雑誌探索など)と社会学理論が適度に組み合わされた論考が並び、水準が高いが、個人的にとりわけ面白かったのが、木島由晶のホスト論および辻泉氏の鉄道ファン論であった。前者は、ホストクラブでの参与観察をもとに彼らのパフォーマンスの意味をつぶさに解読し、ホストのコミュニケーション・スタイルに今後の「男らしさ」のひとつのモデルを求めていく。非情に優れたホストの実態研究だ。後者は、鉄道が「男のロマン」になった経緯を日本の近代社会の形成と転換から分析し、またそれが戦後「オタク趣味」へと成り下がった(と言うのは不適当かもしれないが)理由を解明する。さらにそこから「男のロマン」とのよい付き合い方を示唆してみせ、ひとつの論文として見事な完成度を誇っていると思った。
本書を問いかけの一冊として、このニュータイプの「男性学」は今後も継続されていくということだが、本書での議論で勘所は出し切ったということにならず、もっと面白い事例や考察がなされることを期待したい。