この一冊で白秋童謡のすべてが分かる
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赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い。赤い実をたべた…童謡集『とんぼの眼玉』に収録。初出は1918年10月号の「赤い鳥」。白秋によれば、この詩はわたしの童謡の本源である、という。こういう単純明快さこそが詩の原点、子供の発想に見合うものであろう。 「砂山」は中山晋平の民謡ふうな作曲、山田耕作の歌曲ふうな作曲がある。「からたちの花」は山田耕作の作曲。共通語のアクセントと曲の高低を完全に一致させ、あたかも聴衆に語りかけるように曲をつけた。「待ちぼうけ」は韓非子の「守株」の故事に基づいているが、白秋は漢籍に含まれる教訓臭さを排して、ナンセンスでコミカルな内容にまとめている。耕作は白秋の意図を汲み取って、この童謡をあっさりと民謡ふうのバラードに仕上げている。白秋と耕作は作詞・作曲の名コンビであった。その名曲童謡は今なお日本人の心に響く郷愁の歌として、未来にも唱い継がれるに違いない(雅)