楕円曲線上の代数学入門
★★★★☆
楕円曲線上の点で座標が整数および有理数の場合にどのような性質をもつかを丁寧に述べた入門書です. とくに楕円曲線暗号アルゴリズムの開発にとって重要な,有限体上の点の位数計算に関する事柄が詳しく書かれており,有理数体上の場合(2章)および有限体上の場合(4章),それに虚数乗法(6章)の知識をその証明と合せてわかりやすく得られる好著です. 楕円曲線の面白さを堪能するには,モジュラー関数についての事柄を扱っていないために物足りなく感じるかも知れませんが,逆に大学学部生レベルの教科書としてよくできていると考えるべきしょう. 予備知識として群・体に関して代数学入門程度のものを必要とします.なお,翻訳書「楕円曲線論入門」がシュプリンガー・フェアラーク東京より出版されていますので,英語の論文やネットニュースに手を焼いている人の参考にもなるでしょう.