歴史/批評の奪還
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今日のグローバル資本主義の下で村上春樹の作品やハリーポッター
が商品として流通して無国籍化しています。
しかし、文学とは本来グローバルな空間の上で歴史的なつながり
がどう今現前してきているのかを「証言」することです。それによって
中心の価値を絶えず揺さぶる「批評」を行なってきました。たとえば
安吾(文学のふるさと)や中上(路地)の作品が日本文学にもたらした
のは、この歴史/批評の奪還であると言えます。
この意味で著者が「文学」をやめたつもりはないという言葉は、
文学への激しい批判に他なりません。本書にはまさに自己に対しても
永遠に啓蒙主義者であり続けようとする氏の原点が息づいています。