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志賀直哉〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
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最後の愛弟子の描いた「神様」の肖像 ★★★★★
 志賀直哉の知遇を得て、師と仰ぎ親炙した末弟子阿川弘之が描いた評伝。評伝と言っても、主観的批評をせず、事実を客観的に積み重ねる手法を取っている。「小説の神様」に畏敬の念を払うがゆえに、あえて小賢しい評価をつつしんだのではなかろうか。ともすると、愛弟子は讃仰の言葉を並べたてるものであるが、それを避けている。よけいな評言をさしはさまず、リアリズムに徹するのが師弟に共通するのは、当然であろう。
 阿川は志賀の私生活の事実を羅列して、それを伝記としているのではない。志賀の作品が形成される、拠って来たるところを記している。たとえば、志賀直哉の全作品中、仕上げるのに一番手間と時間のかかった短編は「雨蛙」であるという。我孫子暮らしの終わり頃手をつけ、粟田口に住んでいた7ヶ月間、さんざんいじってみて前へ進めず、山科に転居して2ヶ月後にやっと完成させた。23枚書き上げるのに、約1年を要した。では、手間のかかった分だけ出来映えも傑出しているかとなると、そこは議論の分かれるところであって、作者自身「短いものだが力を入れすぎて却って失敗したやうな所がある」と謙虚に振り返っているという。 
 このように阿川は志賀作品の生まれてくる過程をたどり、志賀の創作意図に迫ろうとしている。そこにも我々がこの書をひもとく意義を感じるのである(雅)
待望の文庫化 ★★★★★
どんな執念が筆者をここまで書かせたのだろう? 文豪・志賀直哉の末弟子である阿川弘之が、師の生涯を、綿密に、詳細に、そして重箱の隅をつつくかのような事柄までを丹念に調べ上げた大傑作である。志賀直哉を師と仰ぎながら、決して、志賀に媚びず、卑屈にならず、「事実」をありのままに描いた伝記の金字塔である。私見を極力控え、事実を積み上げていくという作業がどれほど大変なものか。上巻は、志賀の出生から、昭和期前半までを正真正銘、網羅している。一般の読者から、学生、研究者まで、幅広い読者層が予想されるが、これは、伝記であって、評論集ではない。本書を読むことによって、志賀直哉という人物についてはもちろんのこと、大正期から昭和期の時代情勢まで、読者の関心は深まるであろう。