太宰治の「妻」
★★★★★
結婚してから太宰が愛人と自殺するまでの10年間、身の回りの世話をし、取材旅行に付き合い、書き散らされた原稿をまとめ、子供を育てながら作家・夫 太宰治を支えた女性の回想録である。 自身もお茶の水出の元教員という才女で、それが文章にも表れている。 太宰ファンにはたまらない、私生活のエピソードや作品にまつわるエピソードが盛り沢山。細かな描写や批評に、筆者の太宰に対する複雑な愛情が見え隠れしている。 晩年の女性関係については一切触れられておらず、あくまでも作家=太宰治の記録に徹している所にも、筆者の「作家太宰の妻」としてのプライドがうかがえる。太宰治がますます好きになる。ファン必読。
作家論には欠かせない一級資料
★★★★★
知的な内助の功を果たす美知子夫人の姿が躍如としている。
見合い結婚で結ばれた太宰治は、文学のために生きた「文学の寵児」だった。戦中戦後の10年間、妻であった著者が、共に暮らした日々の様子、友人知人との交流、疎開した青森の思い出など、豊富なエピソードで綴っている。信頼して寄り添った人間太宰の向日的面の立ち姿が淡々と、しかも入念に書き留められている。
一時的に付き合った女たちとは違い、太宰と共に暮らし、子をなして、日々会話し、身の回りの世話をしたか特別な女性。ちょっとした女問題では動じない、聡明だった女性の記録であり、作家論には欠かせない一級資料である。
この人、強い
★★★★☆
太宰治の妻。破天荒な生き方をして、愛人と一緒に死んでしまった夫を妻の目で振り返った作品である。冷静な文章にはさすが才女といった感じ。そして、太宰治に対する複雑な愛情が読み取れる。読み終えての感想。この人、強い人だなあ。こういうところに、太宰は案外、息苦しさを感じてしまったのかなあと思ってしまった。