めちゃくちゃ音がいいヘンテコドゥームバンドのうれしい再発。
★★★★☆
アメリカのドゥームバンドが出した2枚のアルバムをまとめたお得盤。2枚組みでSIDE-Aが96年の「TOWERS」、SIDE-Bが97年の「RIFT.CANYON.DREAMS」っていうアルバムだ。これが彼らの残した全音源らしい。ミックスし直している。
メンバーが後にSunn 0)))を結成するが、この中に入っているのは正真正銘のドゥームメタル。完璧なリフミュージックだ。ドローンやアンビエントの要素はない。とは言ってもクラシカルなハードロックやブルーズロックの要素はほとんどなく、全曲長スローだ。CELTIC FROSTの「MORBID TALES」に収録されている曲のスローパートだけでアルバム一枚作りあげているような感じで、復活作「MONOTHEIST」の高完成度盤っていう感じでもある。またWINTERからクラスト成分を抜き取ったようにもみえる。
正直初めて聴いたときの感想は「みんな同じに聴こえるなー」だった。しかし何度か聴いていると多彩なリフがあり、曲ごとに個性があることにきずく。最初はリフがデカすぎて輪郭がつかめなかったのだ。どの曲も飽きる前にリフが変わりメリハリがある(SIDE-Aの2曲目はたいくつかも)。ランニングタイムもAが5曲で47分、Bが5曲で48分で割と良心的だ。
このバンドの特徴はなんと言っても音の良さにある。両アルバムをSIDE-A、SIDE-Bとしていることからもわかるように、60年代後半から70年代前半のバンドのような音で、このてのバンドはけっこうあるが、本バンドが違うのは録音が超クリアなところだ。ぜんぜんモコモコしておらず、埃っぽくもない。最近のバンドのようなドロドロ感やズルズルと引きずる感じも全くない。ギターは昔のファズっぽい音で、さらに固めなのでやたらとリフにメリハリがある。その裏で「ボーーン」と大きな音で鳴らすベースもいい。ギターは比較的中音、ベースはとにかくヘビーで役割分担がきっちりしているのも好印象だ。さらにその裏で、ゆったりと大きな音で叩くドラムが最高だ。プレーは地味だが力強く、ツボをしっかりとおさえていてとてもセンスがいい。絶妙なタム使いでリフの中心を担う。まるで巨大な鏡餅のようだ(ギターはミカン)。けして良いとは言えないリフをここまで魅力的にしているのはドラムの功績が大きい。この3者がいっぺんに「ドカーン」と鳴らす様はとにかく爽快だ。
ボーカルはヘンテコなメロディーを歌い上げる高音Voと子供の悪魔の喚きみたいなVoの二本立て(1人でやってる)で曲にメリハリを与えている。
またこのての音楽に多い暗さや絶望感はほとんどなく、全編に亘り不思議系な雰囲気を宿しているのも特徴的だ。正直僕はワイノのようなハードロック直系のドゥームが好きなのだが、気持ちよく聴けたのもこの雰囲気によるものだろう。