「曹操は、なぜ赤壁で敗北したのであろうか」
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どうあがいても陳腐に陥らざる三国志論です。
とくに、陳琳を扱った「飲馬長城窟行」、曹植に比しての曹丕の「豆は釜中に在って泣
く」、何安の「烏に反哺の孝あり」あたりはしびれます。
ともあれ、魯迅の「魏晋の気風および文章と薬および酒の関係」を韜晦とヨミ、孔明、周
瑜に比して、曹操の天下の計のなさを述べてみるのが本稿の主調となっています。
それと、余談かもしれませんが、「大衆芸術論」で吉川英治を格好のライバルとみなして
いる旨の発言は、腸がよじれてしまいます。
詳しい内容は、簡にして要をえた井波律子さんの解説の一読をおすすめします。
また、井波律子さんの「三国志曼荼羅」もおすすめです。
曹操配下の知識人に関する論考は「随筆三国志」を一歩推し進めたかの感があります。
何故なら、孔明の天下三分の計、周瑜の天下二分の計、と比すべきは、荀ケの天下の計で
あろうと思われるからです。