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芥川龍之介短篇集

価格: ¥1,728
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: 新潮社
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読みやすく、内容の濃い画期的な編みかたの短編集 ★★★★★
まるでビスケットの詰め合わせの缶を開けた時のように
芥川龍之介の珠玉の小品が、四つのカテゴリーごとに
読みやすくちりばめられている。
その作品はどれも、ほろ苦く痛々しさを伴って
胸に迫ってくる。

この短編集は日本人ではないワシントン生まれの英訳者、
ジェイ・ルービン氏が編み、村上春樹氏が丁寧な序文を
載せているという点で、実に画期的であり、
読者を喜ばせる作りになっている。

日本の文豪として確実にその名を知らしめた芥川龍之介であるが
私たちがその作品を最初に目にするのは
国語の教科書の教材としてである。そのことが切なくもあったが
村上氏が、とてもあたたかい視点で「文化の共通認識としての機能」と説いている。

作家として活躍したのはわずか12年。
自分で命を絶つその日に向かって、ひた走るような作品群である。
好き・嫌いの次元ではなく、人生の折々に「あぁこのことだったのだ」と
気付くようなテーマを持っている。

発狂するのではないかという恐怖に苦しみながら書かれた後期の作品の
ノスタルジックな外国の風景画のような背景が印象に残る。
古典になろうとしている芥川作品を新しく読み返す楽しさ ★★★★★
 村上春樹は本書の序文で芥川龍之介を日本の「国民的作家」としている。芥川は「知的エリート」ではあっても、お札になれない「滅び」の作家なのだから、その適任者は夏目漱石になるにちがいない。そんなことはない…「蜘蛛の糸」は小学生、「鼻」は中学生、「羅生門」は
高校生に教材になって親しまれているではないか。純文学の短編が主体の「芥川賞」に憧れる大人…。
 ジェイ・ルービン編者(英訳)の部類分け「さびれゆく世界」「刀の下で」「近代悲喜劇」の後に「芥川自身の物語」を立てて自伝的作品を集めている。一番詳しい芥川の半生「大導寺信輔の半生」に「…どうして僕はみんなと違うんだろう?」と懐疑的になる自画像が描かれている。「或阿呆の一生」はさらに強烈な自意識に満ちた主人公の下降線をたどる激白が続く。「彼の前にあるものは唯発狂か自殺かだけだった」(49節)「世紀末の悪鬼は実際彼を虐んでいるのにちがいなかった」(50節)
 村上春樹のいう「国民的作家」とは、時の試練に耐えた【強固で奥深いもの】をその作品の奥に感得できることであろう。本書には、定評のある名作ばかりでなく、「首が落ちた話」「葱」「馬の脚」などが網羅されており、拾い読むのが楽しい。
わたしにとっての"Book of the Year"! ★★★★★
現代国語に必須の作家で、今年が没後80年。出身の旧制三高(現両国高校)同窓会(淡交会)は今年の文化祭で、教室一部屋を使って、数学の答案(現品)その他貴重な資料を展示していた。

本書の特徴は、読みやすいこと。短編集と銘打っているのだが、317頁という限られたスペース
(うち50頁はまず、編者ルービン氏のforewordで27頁まで。あとが村上春樹の序章=これがけっこうな大作だ)に18話がおさめられている。選ばれた作品群の分類がわかりやすく、とてもいい。

次男の病気をモチーフにした「子供の病気」、自身の心象風景を綴ったと思われる
「大導寺信輔の半生」はとくにおもしろい。三高時代の"暗黒の日々"が赤裸々に描写されているためだ。
研究者、ファンはあらためて読破すべき本。1600円+税という価格は
ちょっと気になるが。