フランス政府から文芸騎士勲章を受けるだけあって、人を惹きつける教養があり、話が興味深く、力すら湧いてきます。ご自身の通暁していらっしゃる世界の伝統文化、藝術、歴史の素養を活かして日本文明の神秘を語られます。
心に残るのは、世界が受けた日露戦争の衝撃と、孝明天皇と明治天皇の御聖徳のお話です。天皇のことを語る本は余りありません。でもかつて世界は、平和と繁栄の為にみずからの身を捧げる祈りをされる天皇という存在に、満腔の敬意を表したといいます。その讃嘆を伝える当時の世界の新聞が多数引用されています。これが資料としても貴重であり、それ以上に読んでいて感動してくるものです。日本の天皇は只の飾り物だと思っていたら、ショックを受けます。さながら、目覚めのショック、とでもいうべきものを・・・。
大判で文字の大きさも読みやすく、装丁の仕上がりも美しいです。記紀神話の世界から海外のドラクロワの名画まで、絵画や写真が豊富に散りばめられているので、お香のように馨りたつ素敵な出来栄えを、じっくり堪能する事ができました。何度も読める、私の永久保存版。