対談本なのに、金融危機の流れが理解できる。
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経済学者の本山美彦氏と哲学者の萱野稔人氏の対談。
「姿無き占領」などアメリカの対日経済政策を告発してきた本山氏に萱野氏が質問するような形式で対談が進められている。
アメリカの金融政策の流れがキチンと解説されており、対談本ながら、基本を押さえられる秀逸な本。国家(規制)と市場の関係など素人である私でもちゃんと理解できるのがうれしい。
やっとアメリカから自立出来るチャンス到来かもしれない
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アメリカ型金融資本主義をモデルとして、小泉改革を推進してきた頭脳の一人であった中谷巌がサブプライムローン問題、リーマンブラザーズの破綻と、信じ切っていたアメリカ型資本主義に裏切られ、懺悔の書として『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』を発表して話題を呼んでいるが、今更言われてもなぁ〜と割り切れなさが残る。
だけど、本書は一貫して『金融権力』、『格付け洗脳とアメリカ支配の終わり』、『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』などで、今回の金融危機に対して警鐘を鳴らし続けていた経済学者本山美彦とリアルな暴力装置としての国家論なきナイーブな市場原理主義的グローバリズムは破綻すると哲学する、『国家とはなにか』、『権力の読みかた』の萱野稔人が対談して議論を深め、アメリカ型金融は破綻すべく破綻したんだと説得力を持って分析してくれる。
第一章:「金融危機を資本主義の歴史からみる」では、世界恐慌→軍事ケインズ主義→変動相場制→アメリカ経済の国際競争力の低下→オイルダラーの活用→徴兵の停止と軍事の経済的性格の変化
第二章:「アメリカの「世界の金融センター」化と日本」では、ニクソンショックからプラザ合意、BIS規制によってつぶされた日本の銀行。間接金融から直接金融への転換。「年次改革要望書」とアメリカ通商代表部。時価会計の衝撃。談合とアメリカ、など。
第三章:『「世界の金融センター」アメリカのしくみと手法』では、「金融権力とは何か。投資銀行はなぜ消滅したのか。ファンドの存在。債権の証券化とは何か。CDSとシンセティックCDO。拡散されるリスクと蓄積されるリスク。オフバランスというトリック。先物取引のメカニズム。通貨先物市場の成立におけるイデオロギー。財政政策の変容とマネタリズムの誤り。投入された公的資金はどこへいくのか、など。
第四章:「金融危機のあとにー資本主義のゆくえ」で、基軸通貨の問題。アジア共通通貨圏の可能性。金融は国家から独立したものなのか?。市場主義の誤謬と価格決定メカニズム。市場原理主義をささえた人間像の崩壊。資本主義と国家の関係をみなおすこと、など。
そして、最後に萱野稔人は経済的ナショナリストの立場を宣言する。本山美彦は経済的パトリオティズムともいうべきESOP(従業員株式所有制度)を核とした「地域の自立」を宣言する。どちらにしろ、アメリカからの自立を図るわけです。
どれも知っていることだが、つなげて解説されるとまた新しい発見
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あまり期待しないで買ったが、掘り出しものだった。
この中で語られる事実個々(グラム・ラドマン法、CME、ランド研究所などなど)
については知っていることが多かったが、
その事実をつなぎ合わせていくと、一つの絵が見えてきた。
読み方によっては、なんと米国はひどい国ということになろうが、
私は、いかに、米国という国家が戦略を持って国を運営してきた
という点に、あらためてその凄さを実感した。
戦略なき国家日本の行く末がむしろ心配になった。