鴎外だけが悪いのではない、とは分かっていても、やっぱり鴎外が嫌いになる
★★★★☆
●「鴎外最大の悲劇」とは、脚気が栄養障害による病気であることのほぼ確定したのちも軍医・鴎外がそれを否定しつづけ、そのために日清・日露戦争のとき陸軍に大量の脚気患者を出してしまった惨禍のことである。
●「自分が間違っていました」というひとことを絶対に言いたくないばかりに問題解決への道を踏み荒らしつづけた鴎外の許しがたい振る舞いの数々を、本書はこれでもかというほど目の当たりにさせてくれる。これは、同じ科学に携わる者としての私をいらだたせるに十分なものであった。もともと鴎外はあまり好きではなかったが、この1冊で私の鴎外嫌いは決定的となった。
●しかし、白米兵食と脚気の関係性をかたくなに認めなかったのは鴎外だけではなかったということも忘れてはならないだろう。軍医部長老の石黒忠悳や東大医科大学長の青山胤通がその態度を改めなかったかぎり、鴎外は居ても居なくても陸軍の脚気惨禍は起こった(ただし、鴎外が早い段階で態度を改めていれば惨禍の拡大はもっと防げたにちがいないが)。
●本書は、注意深く読まないと鴎外ひとりが諸悪の根源であったかのように思いこまされてしまう危険性がある(決してそうは書いていないのだが)。また、著者の話運びには、鴎外の過ちひとつひとつをそのパーソナリティーの欠陥に帰そうとする傾向がある。しかし、石黒や青山もそうであったように、それは鴎外ひとりに限らず、当時の軍という異常な集団の中で科学の正常な営為さえもねじ曲げられてしまっていたという一面の事実が少なからずあるように思われる。
鴎外の虚像を抉った緻密な考証が凄い
★★★★★
脚気に対しての鴎外の医者としての誤解が、多くの日本兵士を無駄に殺したことが、彼が明治天皇の死に際して殉死したことを明らかにし、隠されていた秘密を明らかにした点で、日本人に必読の画期的な力作である。権力に連なるものの持つ秘密は隠されたまま、虚像が定着して英雄視されるのが常だが、それを剥ぐのがジャーナリストや作家の責任だが、そうした勇気を持つ人が日本には至って少なく、それが現在進行形なのが「小泉劇場」の虚妄であろう。
緻密な論を重ねる良書
★★★★☆
鴎外が脚気問題に責任のあることは知っていたが、著者があとがきでいうとおり「林太郎の説の誤り」という程度の理解で、責任は彼の軍部での地位の故に生じる受身なものと考えていた。しかしこの書を読んで、鴎外が麦飯の効用を認めることを執拗に拒否し続け、陸軍の多数の脚気による死者の発生に重大な直接的な責任があることを学んだ。鴎外のかなり異常な性格を改めて思い知らされ、論争を真実を求める場ではなく、相手を打ち負かす場にしてしまっていることが悲しかった。
最後の史伝物への方向転換を脚気問題のためとするのには飛躍を感じたが、その他の論は説得力のある力作である。
緻密な論を重ねる良書
★★★★☆
鴎外が脚気問題に責任のあることは知っていたが、著者があとがきでいうとおり「林太郎の説の誤り」という程度の理解で、責任は彼の軍部での地位の故に生じる受身なものと考えていた。しかしこの書を読んで、鴎外が麦飯の効用を認めることを執拗に拒否し続け、陸軍の多数の脚気による死者の発生に重大な直接的な責任があることを学んだ。鴎外のかなり異常な性格を改めて思い知らされ、論争を真実を求める場ではなく、相手を打ち負かす場にしてしまっていることが悲しかった。
最後の史伝物への方向転換を脚気問題のためとするのには飛躍を感じたが、その他の論は説得力のある力作である。
鴎外ってとてもイヤな奴だったんだ
★★★★★
著者坂内氏は言う。明治期において脚気は大問題であった。特に軍のように消耗の激しい集団では,戦時のような時は特に多く脚気が発生したが、日本軍は日露戦争前に既に,麦飯を給することで解決していた。それを、鴎外は軍医部長という職分にあって、細菌感染説を強引に押しとおし,兵に米飯のみを給して,戦死46400余名に対し,脚気死者27800名の多くを失った。戦後鴎外はその責任を問われるどころか、永達を重ねた。
官吏が責任をとらないことは明治以来の伝統だったのだ。今政府の高官達の顔を見ると、こんな奴がいばっているのか、と思う。イヤな奴らの天下をひっくり返そう!