服飾(史)に特に興味がなくても楽しい。
★★★★★
ファッションとあるが、それらの説明は大部分がオースティンの作品や書いた手紙を引用しつつ行われているので、
作品や登場人物達にかなり密着したものとなっている。作品の裏豆知識的な本としても楽しめる。
何よりオースティン含め人物達の存在がより生き生きしてくることは間違いない(男性の服飾についても詳しく扱われている)。
私自身はBBCのドラマで感じた数々の細かい疑問がかなり解消された。
ベネット夫人がガーディナー夫人に「最新流行の長袖の話を聞けて良かったわ」と言っているのは一体全体どういう事なのか、
また、ラストの方でビングリーが訪ねて来た時、ジェインがまだ髪も整えず着替えもしていないのはどうしてなのかなど、
文化や生活に則したちょっとした事柄が自分には長い間不可解だったので。
同時にBBCのドラマがいかに正確な時代考証の元に制作されていたのかがわかり、感心した。
朝・日中・夜、それぞれの時間帯にふさわしい衣装、ファッション小物の数々、靴の種類等、美しい図版や詳細な説明が一杯だ。
皆さんもおっしゃっているように、一枚いちまいのカタログ(プレート)が本当に素敵で、眺めているだけで幸せな気分になる。
オースティンの時代の実際のドレスの写真も数枚あり、文章や版画ではなかなか判らない質感や風情が伝わって来る。
目に楽しく、作品世界もより掘り下げて知ることができる、貴重な資料の詰まった一冊だと思う。
残念なのは補稿において一つ見逃せない誤りがあること。ギャスケルが書いたのはオースティンの伝記ではなく、C.ブロンテの伝記だ。
おそらくうっかりミスなのかもしれないが、これは結構大きな違いなので気を付けて欲しかった。
きれいな絵がいっぱいです
★★★★★
ちくま文庫の表紙の絵は、この時代のファッション雑誌からのものだと、この本で知りました。洋服についてぼんやりとした知識しかなかったのですが、生地の値段がどれだけ高いか、または安いか、手間がどれだけかかったか、あの女性の胸を上げる服装はどれほど大変だったか・・などが理解できます。小説や、ジェイン・オースティンの手紙(岩波新書)の手紙に書かれている洋服についての内容が生き生きと想像できるようになりました。知らなくても良いでしょうが知っているとイメージが沸き、現実味をおびてきます。
BBCドラマの高慢と偏見はとても時代考証がしっかりなされているということも分かります。オースティンの針仕事のことも載っていて、細かい作業を得意とする人だったと分かります。オースティンが考えていた「エレガンス」というものが理解できました。今の時代に通じる美しさの基準です。だから今もオースティンの作品は人気なのだと思います。
ひとつだけ難点は、挿絵の解説が長いこと、それを読んでいると本文がとぎれとぎれになってしまうことです。思い切って挿絵は後回しにして、本文をまとめて読んでから、最後に挿絵の解説を読みました。
オースティンが生きた時代の、かわいい「ファッション・プレート」
★★★★☆
ジェイン・オースティンが生きた時代の服飾文化について、オースティンの作品や書簡をひいて解説した一冊。オースティンを読んでいて、当時の風俗に興味をおぼえた方(それはわたしです)には、この本はとても参考になります。
「ファッション・プレート」と呼ばれる、当時、流行を雑誌で紹介するために描かれた版画が、カラーで34枚収録されており、目にも楽しくわかりやすい。また、この本やオースティンの小説に出てくるテキスタイル・ファッション用語の解説があり、モスリンとポプリンの違いがわかって、なるほど〜と思ったりして。
オースティンが刺繍したモスリンのスカーフや、書簡に登場する弟チャールズが姉ジェインとキャサンドラに贈ったトパーズの十字架の写真などが掲載されているのも、ファンには興味津々。
あと、「分別と多感 (ちくま文庫)」「エマ (上) (ちくま文庫)」「エマ (下) (ちくま文庫)」「説得 (ちくま文庫)」のカバーは、この本にも収録されている「ファッション・プレート」が使われていたことがわかり、ますます楽しい♪
「エマ (下) (ちくま文庫)」の下巻の表紙なんか、とってもかわいい!と思っていたから。
オースティンの世界にどっぶりひたりながら、いつの世も変わらぬ女性のファッションへの関心の高さに、共感することしきりです。