琥珀のクロスのモデル
★★★★☆
『マンスフィールド・パーク』にて、ファニーが兄から琥珀のクロスを贈られる場面がありましたが、
そのモデルとなった、同じく彼女が弟から贈られたトパーズ(シトリントパーズ)のクロスの写真が載っています。これがかなり嬉しい。
ジェインが所持していたターコイズで装飾されたブレスレットも載っており、なかなか素敵です。これをどんな風に身に着けたのかなとか、あれこれ想像。
ウィンザー城に今も残る摂政皇太子に献呈された『エマ』の特装本も素晴らしいです。もちろん200年の時が本をかなり疲れさせているのは否めませんが、
これが製本され、献呈されたばかりの時の姿はさぞかし見事なものだったでしょう。本が非常に貴重だった時代に、さすがは王族と、ヘンなところで感心(笑)。
自筆の手紙や、(現存数は少ないですが)草稿の写真も豊富で、その筆跡を眺めていると、ジェインが確かに生きて、この世界に存在していたことを強く感じます。
物語の舞台となった場所の写真も嬉しいです。例えば『説得』のラストの方でアンがウェントワース大佐の手を借りて歩いたバースの通りや、
『エマ』で皆がピクニックに出かけるボックス・ヒルの風景画などは、読みながら思い描いていた通りでした(ということはやっぱりジェインの描写が巧いんだな)。
他にもジェインとその作品に関係する様々な写真や肖像画が掲載されているので、彼女の人生や家族や生活を視覚的に知ることが出来ます。
本文自体はジェインの人生をざっと辿るもので、既にジェインの愛好家の方にとってはそう目新しい事は多分ないと思いますが、もちろん読む価値のあるものです。
あるいは本格的な伝記を読む前に大まかな流れとして目を通しておくのにもいいかもしれません。横書きなので私には少し読みにくかったのが残念。