本も心で読まないと分からない、「ボアの腹の中の象」に気付かない。
★★★★☆
「ものごとは、心で見ないと良く見えない。いちばん大切なことは、目に見えない」という狐の言葉は『星の王子さま』の中で重要なモチーフであると思っていました。しかし、私も読み方もまだまだ浅かった、と本書を読んで気付かされました。(しかも、寝そべって読んでしまったことに反省させられました)
つまり『星の王子さま』も前知識(と想像力)があると読み方がかなり変わってくるわけです。サン=テグジュペリの人生、執筆時(1942年)の彼自身および世界(特に彼の母国フランス)の状況を考慮した上で、改めてこの「星の王子さま」を手に取ると、サン=テグジュペリのメッセージ(暗喩)がジワジワと滲み出てくるように感じられます。(王子さまとサン=テグジュペリが重なって見えてきます) そして、その暗喩に自由度が残されているので、彼の妻(コンスエロ)や献辞を捧げられた彼の友人(レオン・ヴェルト)には一般読者とはまた別のメッセージを受け取れるように仕組まれているように思えました。そういう訳で「心で読まないと、本の字面を追っているだけでは、読書とはいえない」と気付かされます。以前の私の解釈も通りいっぺんなもので、「ボアに飲み込まれた象」のような【一瞥しただけでは読み取れないメッセージ】に気付いていなかったことに愕然としました。(-o-);; 本書を読んで「その解釈はちょっとどうかなぁ?」とも思ったりするのもまったく自由だと思います。一歩踏み込んだ読書に繋がるだけでも良いのではないでしょうか。
本書は中公新書の同タイトルの本より刊行が新しく(2006年4月)、「文庫版あとがき」(2頁)がついているところがミソです。解釈の余地はまだ残されているんだな、と気付きます。