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星の王子さまの世界 (中公文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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作者の意図は作品にまさる? ★★★★★
 現下の世界の危機にどこでも責任を感じ、思いつめる一人の「大人」の、苦悩に満ちた「懺悔と贖罪の書」であると言う著者。また、人びとの心の中に生き続けている「童心」に訴える普遍性のある「子ども」の物語として読み継ぐ古典。夢か幻か現実か、『星の王子さま』作品そのものを読み解いてゆかねばならない。隠された原作者のメッセージとは何か、いたるところに仕掛けられたものを読み取る必要がある。一律にはいかないこの作品の底知れない奥深さがある。この物語が書かれた第二次世界大戦下に書かれた作品の中の「ウワバミ」「バオバブ」などの記号に託したものは?「作者の意図は作品にまさる」「作品を鏡にして自分を知る」
本も心で読まないと分からない、「ボアの腹の中の象」に気付かない。 ★★★★☆
「ものごとは、心で見ないと良く見えない。いちばん大切なことは、目に見えない」という狐の言葉は『星の王子さま』の中で重要なモチーフであると思っていました。しかし、私も読み方もまだまだ浅かった、と本書を読んで気付かされました。(しかも、寝そべって読んでしまったことに反省させられました) 
つまり『星の王子さま』も前知識(と想像力)があると読み方がかなり変わってくるわけです。サン=テグジュペリの人生、執筆時(1942年)の彼自身および世界(特に彼の母国フランス)の状況を考慮した上で、改めてこの「星の王子さま」を手に取ると、サン=テグジュペリのメッセージ(暗喩)がジワジワと滲み出てくるように感じられます。(王子さまとサン=テグジュペリが重なって見えてきます) そして、その暗喩に自由度が残されているので、彼の妻(コンスエロ)や献辞を捧げられた彼の友人(レオン・ヴェルト)には一般読者とはまた別のメッセージを受け取れるように仕組まれているように思えました。そういう訳で「心で読まないと、本の字面を追っているだけでは、読書とはいえない」と気付かされます。以前の私の解釈も通りいっぺんなもので、「ボアに飲み込まれた象」のような【一瞥しただけでは読み取れないメッセージ】に気付いていなかったことに愕然としました。(-o-);; 本書を読んで「その解釈はちょっとどうかなぁ?」とも思ったりするのもまったく自由だと思います。一歩踏み込んだ読書に繋がるだけでも良いのではないでしょうか。

本書は中公新書の同タイトルの本より刊行が新しく(2006年4月)、「文庫版あとがき」(2頁)がついているところがミソです。解釈の余地はまだ残されているんだな、と気付きます。