平凡パンチの三島由紀夫
★★★☆☆
本編の前半部分は、とても面白い。
そこで描かれるのは、「神格化された三島像」と云うより
「すこし滑稽で度量が広くて人間味あふれる三島」であり
実際に編集者として関った著者の
少しひねくれた愛情が伝わる文章と相まって、読んでいて面白い。
しかし、中盤ぐらいからベルグソンやユングの言説を通して
著者の「三島論」に展開していき、「生(ナマ)の三島」の話が少なくなり
読んでいて興を削がれた感じである。
自分と三島の共通点
★★★★★
いつのまにか、三島より長生きしている自分との共通点をたくさん発見し、多いに楽しめた
自分は、彼の作品をほとんど読んでいないが、彼の考え方、人と成りに興味があるので満足でした。
三島もすごいけどパンチもすごかったんだな
★★★☆☆
“三島本”って、どうしても著者、編者の“三島物語”になりがちだけど、この本は、三島の断片が、無理に整合性をつけることなく提示されていて、新しい発見がいっぱいあった。ハンバーグの喰い方とか、その明るいトリックスターぶりとか、既存の“三島物語”を相対化している。まぁ、三島の謎はますます深まったのだけど。意外だったのは三島がこんなにパンチに取り上げられていたってこと。パンチって言えば、朝日ジャーナル、少年マガジンと並んで全共闘世代のオピニオン誌ってイメージが強いんだけど、パンチって別にポリティカルで偏狭な全共闘に肩入れしたような雑誌じゃなく、ノンポリで野次馬で硬軟なんでも取り上げる間口の広い雑誌だったんだよな。俺がパンチに接した70年代後半って、若者雑誌としてはすっかり週プレにお株奪われた状態で、すでに伝説の雑誌だったから。まぁ、この本読むと三島もすごいけどパンチもすごかったんだな。
“二十七歳で感受性を捨て、四十一歳では、俺には無意識というものはない、といいきってしまう物書き”である三島の関心は、45年という短期間に「文字」から「映像」、「肉体」、そして、「死」っていうように、過剰にそぎ落とされていくんだけど、秀才の悲劇っていうのか、本人の真剣さとは裏腹に凡人には届かないし、自己完結しちゃってるし、表層的な振る舞いだけが世間一般のオモチャとして捉えられちゃうっていう感じだよね。1956年の時点で「ものが入ってきたのだ。芸術の世界に......。」って、その後のボードリヤール的未来が見えちゃってた三島ってのは、やっぱ、すごいけどね。誰よりも早く日本の行く末を実感して、誰にもその真意を悟られないまま、猛スピードでひとり完結しちゃった人。まぁ、三島も面白いんだけど、オヤジ「日刊ゲンダイ」とOL「Hanako」両方やった椎根和氏自身の昔話もぜひ読んでみたいな。
活気ある時代だった。
★★★★★
一気に読ませてもらった。新しい時代開幕前の騒乱と狂喜の時、私も新宿にデモ見学に行って逃げ惑った一人だった。あの頃は小説もしっかり読ませるものが多く、雑誌の世界も突飛で面白く新しいカメラマンやイラストレーターの出現も多かった。学生は体制に反発し全てが丸ごと生きているという活気に溢れた時代だった。あの頃想像していた未来とは違ってきてる現在、おとなしい若者と本格的狂喜に突き動かされての犯罪者の多い日本。三島が生きていたら今をどう考え、どう行動し、どんな小説を書いただろうかと考えてしまう。三島は現在の日本を察知してたのだろうな。現状を知らないまま、早くに散ってしまったが・・・この本はそんな思いを深くさせてくれた。著者の記憶力にも脱帽。もちろん多くの資料を横においてのことだろうが、特に三島の部屋の細かい描写が面白い。今いちど三島由紀夫の本を読み返してみたくなった。
生三島いかがです?
★★★★★
早くに死んだ人は、必要以上に奉られちゃうのが、どうもね〜。
という偏見で、学生の時に文庫一冊くらい読んだきり、三島ってずーっと敬遠してた。
でも”密着モノ”好きなんで、”最後の番記者”(カコイイ!)につられて購入。
よかったの、これが。
妙に高級そうなモンがごろごろしてる家の写真とか、いいし。
生三島をクソミソな記事にしちゃうとか、そこまでやる? でもそういう時代が実際あったんだよね、すご。
それと、この本は感傷的じゃないとこが、グー。
この著者、他にも書いてるのかな? 一杯ネタ持ってそうなので、もっと書いて欲しい。