自作自演は作曲家の一次情報だし、演奏も非常に良い。
★★★★★
名盤。ただし、このCDは19TR以降はかなり古い音源で、そこまでは名演を堪能できる。
自分で作った音楽を自分で演奏する、というのは、ある場合は理想であり、他の場合は最悪である。前者がクライスラーで、後者はサティーである。
このCDはクライスラー自身の音色やテンポ設定がよくわかる一次資料で大変貴重なだけでなく、演奏も大変パトスが感じられ悪くない。とりあえずCD前半に収録されている「中国の太鼓」を聞いてみよう。非常に軽快・流麗で、パワーだけで押していく現在とは異なる、楽しい演奏である。クライスラー、といえば「音色」に魅力があってテクニックがどうこう、というタイプの演奏家じゃないとよく言われるようだが、そんなことはない。
また、例えば「愛の喜び」だが、あれは冒頭からメロディーが三度平行で出るので技術的に難しく、最近のヴァイオリニストでも結構音程外している場合が多いが、クライスラーが音程を外しているという感じは与えないし、何よりも「疾走感」を大事にしているし、「うた」があるのだ。
クライスラーがヴァイオリニストとしてはたいしたことない、と思っている人にはお勧めの一枚である。