人間の良いところと悪いところが色濃く出ている
★★★☆☆
この巻で最後の元農民のサムライ、キクチヨが仲間になります。サムライを経験し元農民であるキクチヨがサムライと農民との間に立ってサムライの言い分、農民の言い分の両方を立てながら、「お前らは間違っている」と涙ながらに叱咤するキクチヨはいつに無くカッコよく感じました。これは原作「7人の侍」でもおなじみのシーンですね。人間には「言葉」という素晴らしいものを持っていると改めて感じました。
キクチヨが元農民ということに驚かされると同時にサムライに憧れサムライになるために自分を機械化したことに、この作品中の「サムライ」というものの影響力の凄さを思い知りました。
また、この巻で初めてカツシロウが人を斬ります。敵であれ人を殺してしまったという罪悪感からか理性が崩壊します。カンベエの平手打ちで理性を取り戻しますが、それでも罪悪感がこびりついた感じのカツシロウが哀れに思いました。憧れだけで踏み込んだ「サムライ」というものの壁の高さというものを知りました。戦国時代や世界大戦中に駆り出された少年たちもこんな感じになってしまったのかなと思うととても悲しくなるのと同時に戦争は「人」をだめにすると思いました。
この巻で人間の愚かさも改めて知らされました。この巻で農民の一人が仲間を見捨てて自分だけ助かろうと野伏りに内通しようとします。今まで苦労を分かち合ってきた仲間を自分の都合で勝手に見捨てて自分だけ助かろうとするのは許せないと感じました。動物の中で「裏切り」という行為は人間だけがする愚かなことだと思いました。
いまいち盛り上がりに欠ける暗い感じの巻だったのでちょっと好きにはなれなかったです。