日本医療(医学じゃなくて)の現場における最大のトピック。
★★★★☆
医療経営の効率化がいわれて久しい。IT技術のおかげで、カルテ情報、レセプト情報、会計財務情報などの様式統一化と一元的(に近い)管理が可能になり、その結果として入院日数や医療密度などを病院毎にあぶりだすことが可能なDPCによるベンチマーキングの導入が進んでいる。本書は「ベンチマーク分析によるDPC対応標準治療計画の作成」という書名を裏切らない内容となっており、その意味で大変良書。この種の本ではベストなのではないだろうか?
しかし私は疑問に思う。本書の紹介する手法によって獲得できた効率を享受するのは一体だれなのか、と。病む患者か、苛酷な現場で働く医師や看護師か、経営破綻した病院経営者か、あるいは運用破綻した保険者なのか? 最近喧しい医療の効率化とは、一体、誰のための効率化なのか?
本書には、著者の1人が率いるコンサル会社の手法が随所に紹介されており、入院日数の軽減など、具体的な「成果」が幾つか紹介されている。しかし、「顧客満足度」の向上や低下についての記述は本書では殆ど見られて居ない。また、現場の(現場のである)医師や看護師の業務煩雑化あるいは軽減化についても殆ど記述されていない。
医療の効率化が可能だとして、ではその効率を享受するのは一体だれなのか?その議論が殆ど抜けているので、★ひとつをマイナスとした。