不世出のジャズ・クァルテット
★★★★★
モダン・ジャズ・クァルテットの前にも後にもこのようなピアノ、ヴィヴラフォン、ベース、ドラムスという編成の素晴らしいクァルテットが存在しないことから、いかにこのMJQが稀有な存在で、その織り成す演奏の質が高かったのかを理解できます。
1974年11月25日、ニューヨークのリンカーン・センター「エイブリーフィッシャー・ホール」でのライヴ録音です。ライヴ特有のキズもほとんどなく、観客の拍手だけでなく、固唾を飲んでこのクァルテットの名演奏を堪能しながら、23年間という活動を惜しむかのようなファンの温かい雰囲気まで伝わってきます。
クラシックに傾倒しているジョン・ルイスの冷静で知的なピアノと、ミルト・ジャクソンの情熱的でよくスウィングするヴァイヴによる絶妙な均衡というものがこのグループにあったればこそ、名演奏が生まれているのです。解散後、再結成も果たしますが、それぞれのソロ活動の演奏が物足りないのは、全く違う個性のぶつかり合いが無いからに他なりません。ベースのパーシー・ヒース、ドラムスのコニー・ケイには光があたりませんが、二人の両極端とも言える個性の重要な接着を見事に果たしています。
このラスト・コンサートは、MJQの活動の集大成ともいうべきベスト・アルバムの趣も感じられます。クラシックの原曲をアレンジした作品は格調高く、心地よい緊張感が伝わってきます。ミルト・ジャクソンにとって、やりたい音楽の方向性ではなかったかも知れませんが、ジャズとしての価値を高めているのは、感情を込めたよくスウィングするヴァイヴ無しでは成り立ちません。それゆえ30数年経っても名演奏として聴き継がれているのでしょう。
冒頭の「Softly, As in a Morning Sunrise(朝日のようにさわやかに)」の対位法の鮮やかさにハッとさせられますが、「Skating in Central Park」のような愛らしい演奏もまた彼らの魅力ですし、その真髄を聴くことができます。