2人掛け合いと4人掛け合いを聞き比べる楽しみ。
★★★★☆
解説冊子に重大な誤りがある。妹山が綱、弥七、背山が山城、藤蔵が正しい。
さて、録音の内容については想像していたとおりの素晴らしいもの。これは疑いない。しかし、背山を津、織、妹山を綱、南部で録音されたレコードを聞き返してみると、4人で掛け合うリズムの変化がこの浄瑠璃に輝きと躍動感を加え、悲劇性を高めることがわかる。たとえば雛鳥を語った南部大夫のような芸があることで、山の段は生き生きと動き始めるのだと思う。
最後に、段切れが省略されていることと、録音年月日がないことが残念だ。
幻の師弟共演
★★★★☆
このCDのパッケージ(およびライナーノーツ)には
背山:竹本綱大夫・竹澤弥七
妹山:豊竹山城少掾・鶴澤藤蔵
と記載されていますが、誤りです。
実際には、
背山:豊竹山城少掾・鶴澤藤蔵
妹山:竹本綱大夫・竹澤弥七
です。
コロンピアさんが貴重な音源を連続してCD化しているのは大変有意義な事業であり文楽ファン義太夫ファンには有難い限りなんですが、それだけにこういうポカは残念です。
といいますか、もはや今のレコード会社には山城少掾と綱大夫が聞き分けられる人間もいないのかと寂しい限りです。
さて。
これまた貴重な音源のCD化です。
この録音は(私が知る限り)10年以上前にNHKラジオで流れたのが最後で、義太夫好きの間では幻の演奏として再登場が渇望されていたものです。
山城少掾・綱大夫の師弟が山の段という極めつけの名曲かつ大曲を、それも久我之助雛鳥を掛合いにせず二人きりで、省略なし一段丸々の収録(それだけに段切りが欠けているのが非常に惜しい)。演奏資料としても価値ある録音です。
この曲は下手に座っているはずの妹山の大夫の方が実際にはシテみたいなものです(ですのでパッケージ通り山城少掾が妹山を勤めた録音が存在すればホントに嬉しいんですが)。
綱大夫はその妹山を熱演しています。
綱大夫は大夫としての絶頂期に大病を患ったため、名声に比して残された演奏は良いものが少ないのですが、その綱大夫の一世一代の名演としても貴重なCDです。
じっくりと聞きたい壮大な古典
★★★★★
こういうのを幻の名盤というのでしょうね。音源は古いだけでなく、
SP等の録音を目的としたものではないので良くはありませんので、
音質重視の方にはお勧めしません。義太夫への愛着が人並み外れた
方向きです。
調子はとくかくゆったりで、現在の浄瑠璃に馴染んだものには止ま
っているような感さえしますが、それが登場人物(わずか6人、
主は4人)それぞれの思いの変化を語り、詠うだけでなく、吉野川
を挟んで対峙する妹山背山の空間と同時に流れる時間も表現した
壮大な名演です。人の語りと三味線だけでこれだけのものを聞かせ
る、というか見せるのは、さすがとしかいいようがありません。
妹山側を師匠の山城少掾が持ったことで、背山の芸格もぐっと上が
っています。
なお、残念ながら段切れ部分は途中で消失します。