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ビラヴド―トニ・モリスン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

価格: ¥1,155
カテゴリ: 新書
ブランド: 早川書房
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アフリカ系アメリカ人の魂の叫びを描いたピュリッツァー賞受賞作 ★★★★☆
本書は、’93年、アフリカ系アメリカ人の女性作家として初のノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスンの、その契機となった代表作で、’88年度のピュリッツァー賞を受賞している。また、≪ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー≫が選んだ過去25年のベスト・ノヴェル第1位にもなった、まさに20世紀文学の最高傑作ともいえるすごい作品である。

一貫したストーリーではなく、19世紀後半のアフリカ系アメリカ人の家族、セサとその母親ベビー・サッグスや娘のデンヴァー、知り合いのポールD、そして彼岸から甦ってきたセサの娘ビラヴドの、過去の奴隷時代の苦しい生活の回顧やそれぞれの独白から成り立っている。

純文学というと堅苦しい感じがするが、文章そのものは比較的スラスラと読み進むことができる。しかし我々単一民族の日本人にとって、モリスンのアフリカ系アメリカ人の悲劇というか社会での耐え難い記憶との苦悩に満ちた闘いを理解するのはいささか難解だった。

しかし、デンヴァーやビラヴドの「愛されたい」との切実な想い、失われた愛の可能性を取り戻すための声は痛いほど伝わってくる。思えばビラヴドとは“愛されし者”という意味である。死んだ娘と同じ名前の女性が現れるのは、いかにも象徴的である。

本書は、一種の神秘的な神話小説であったり、先祖たちへの鎮魂歌であったり、現代のアメリカ社会に対するアフリカ系アメリカ人の差別の歴史をふりかえさせる訴えであったりと、いろんな読み方ができるが、彼らの魂の叫びをヴィヴィットに縷々綴った作品であるといえるだろう。
神聖な霊歌の息吹が伝わってくる小説 ★★★★☆
19世紀のアフリカ系アメリカ人の苦悩に満ちた生活を描いた神話的小説。実際にあった事かは判然としない超自然現象に苛まれながら苦難の人生を送る奴隷制度下の人々の話を神話や説話のように叙述した物語。死んだ奴隷の亡霊の現れる家に暮らすアフリカ系の家族の前に現れるビラヴドという名前の謎の女を巡る、語られる機会の少ないアメリカのもう一つの貌で尚且つもう一つの歴史。主人公の死んだ娘の霊だと思われるビラヴドこそ本来愛されるはずだが愛されなかったアフリカ系の民族の忘れてしまいたい過酷な想い出とそれでも語り継がなければいけない悲痛な叫びの象徴であるらしい。しかし作者のトニ・モリスンは決して声高にならず、誰を責めるわけでもなく、静かに淡々と読む者にアフリカ系アメリカ人の辿った苦難の歴史をよく霊歌と言われる神聖な口承伝承風の息吹で訴えかける。

読み物としてはシンボリックな叙述で些か判読しづらい面もあるし読み物として面白いかという疑問もあるが、総じてスラスラ読めます。ただどうしても登場人物の殆どがアフリカ系で肌が黒いのに読んでる私の視覚的イメージにうまく反映できなくて、漠然と白い肌の人を思い浮かべてしまい、これも一種の差別かなと思い反省しました(こういう心理的盲点を利用したミステリが私の知る限り2冊あります)。