米国公民権運動を深く知るために不可欠の書
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アメリカの「公民権運動の母」と慕われ先ほどなくなったローザ・パークスさんの自伝。彼女の名前を知らなくても、キング牧師のことを知っている人は多いだろう。中学校の英語の教科書などでも、パークスさんがバスの中で席を立つのを拒否したことがきっかけになって公民権運動が広がったことが紹介された文章などが載っている。
この本では、彼女が生まれ育った南部の地での黒人差別の実態があからさまに描かれ、また、バス事件に至る経過、その後の公民権運動の盛り上がりが、渦中にいた一人の「活動家」の視点で書かれている。事件のあとの経過も単純でなく、いくつかの法律で人種差別が禁止されてもなお、「白人」の心の中に残る差別意識が払拭されていない様子もよくわかる。
彼女は本書の最後で、今なお、人種差別に関わる事件が起こり、いまだ差別のない心豊かな世の中は実現していないことに心を痛めている。それが「民主主義」を世界に「輸出」しようとするアメリカの現実であり、日本でも同じような現実は存在するだろう。
人種差別の問題はアメリカという国を理解する上で欠かせない要素だと思う。多くの方に、英語の勉強と同時に、ぜひ、この問題にも目を向けてほしいと思う。その意味では、絶好の参考書だ。英語は平易で、わかりやすい。