この作品では、夜間飛行がまだ冒険的な事業だったころ、南米でその事業を確立させようと献身的な(事実かれらは自分の命をそれに捧げていた)努力を続けている人間たちの姿が描かれている。支配人リヴィエールの超人的な意志を軸にして書かれているが、飛行士のひと!りファビアンが悪天候のなかでわずかな光を求めて必死の努力をつづけるシーンは、リアリティがありなおかつ詩的な情感もあってとても心にしみる。
この本には作中人物リヴィエールのモデルとなったと言われるディディエ・ドーラがサン・テグジュペリについて語った文章が収められている。彼はサン・テグジュペリが郵便飛行士として働いていたときの上司で、もっとも身近に作家と接した人の一人である。この文章からは作家の人間性がより鮮明に浮かび上がり、新たな発見があるだろう。非常に価値の高い文章である。