新書で機械工学の概要がわかる本。キカイの専門家でない方への教養書として、またこれからキカイを学んでみようとする方への入門書にもなる。

　右も左もキカイだらけの二十一世紀だが、意外にも、身近にハードな「ものづくり」の現場にいる人があまりいない。一昔前なら、男の子はみんなラジオ制作くらいはしていたが、最近ではそれもない。……ということで、とりあえずアストナージさんや真田さんやボヤッキーの頭の中には当然のごとくあるであろう知識を習得すべく、本書を手に取ってみた。材料力学や機械要素、機械工作、機械材料のイロハから始まり、キカイを取り巻く物理現象の理解のための流体力学、熱力学、電磁気学の基本の解説、最後は制御工学の初歩的紹介がなされている。正直言って、とにかく難しく広範で細かい。それこそ機械化・分業化された現代の産業界では、この一冊分すべての分野に精通している技術者は皆無ではないかと思えた。しかし逆に、本書くらいの初歩的レベルででも、こうして全体的に見通して勉強することは、現代人の務めかもしれないとも思う。インダストリアルデザインの分野でも、これらのことを知っているのといないのとでは、仕事に雲泥の差が出ると感じる。印象的だったのは、「最適解を探す」という意識。キカイの設計に「これ」という正解はなく、常にその環境や条件や制限を考え合わせた上で、最適解を探していく作業。いろいろなことを広く知り、気配りができ、臨機応変に地味で緻密で丁寧な仕事をするのが、一流の技術者なのだと感じた。まさに真田さんやアストナージさんのような人柄。キカイの恩恵に与るばかりでなく、そのスゴさに想いを及ばす利用者であらねばなぁ、と思った。

ロボットを作りたいが、機械のことを知らない人が読むとよい本。
式中の文字を説明していないなど雑な記述も所々見受けられるが、
基本的なことをざっと押さえてあり、かつ専門用語もきちんと載せている。
よって、これより詳しいことを知りたければ、
自分で調べたり専門家に聞いたりすることが容易になると考えられる。

著者の本を数冊読んでいたので、楽しみにしていたのですが、内容の薄さにがっかりしました。２色刷りの意味もなく、挿入されているイラストも単なる添え物で見づらいだけです。新書とはいえ、いい値段を付けているので、今後はそれなりの読み応えのあるものを期待します。