三国志を学術するための手引き!でも何だか変!?
★★★☆☆
これは入門書と銘打っているし、序に記している
「三国志の深い知識を研究レベルにまで高める。」
というコンセプトは素晴らしいと思う。
実際、第一部の「研究入門」は良く出来ている。
しかし、第二部の「研究史動向」が首を傾げざるを
得ない。
まず、執筆者の渡邉氏が異様に自身の成果を
提示し過ぎである。
次に参考文献の多さに比べて研究者が同じような
人ばかりとなっている。読んでいて「あれ?この人
の名前さっきも出て来たような…。」と思わず
呟いてしまう内容だ。
最後にこれは個人的なこだわりであるが名前を
挙げた研究者は恐らく殆ど東京の学者でないかと
思われる。何故なら渡邉氏が10件以上も参考に
している研究者がいる一方で、いわゆる京都学派の
御大による研究成果は殆ど取り上げられていない。
宮崎市定→3件。三田村泰助→1件。
貝塚茂樹氏や岩村忍氏に至ってはゼロである。
これに対して巻末の文献一覧で渡邉氏は自著を
実に30件以上、列挙していた事を付記しておく。
文学、思想面での研究動向については、この
分野でまず間違いなく第一人者であるはずの
森屋洋氏を無視しているのは、もはや暴挙と
言っても過言ではないと思う。
ただ渡邉氏の「名士」に関する研究成果は
本物である。ここで繰り返し記述しなくても
このテーマで一冊、本を書けば良かったのでは
ないであろうか。
追伸:かなりどうでも良いことではあるが
執筆者の渡邉氏は恐らく自虐史観の持ち主です。
自己弁護の書!
★☆☆☆☆
学生の研究を助けるための本というよりも、三国志学会の自己弁護、自分たちの学説を擁護するための書という印象を受けます。
「文献目録篇」の文献リストには、『三国志研究要覧』のとき以上に偏りがあるのではないでしょうか。
三国志で卒論を書く人のための入門書
★★★★☆
この書は三国時代、三国志で卒業論文を書く学生に向けて書かれた内容が多く見られる。
基本的な「論文の書き方」から「資料の解釈の仕方」まで言及されていて、非常に丁寧である。「三国志の基礎知識」ではおおまかな三国時代の流れを歴史学的に説明し、さらに人物録まで付されている。ゲームや漫画で親しんだ「三国志」とは違う「三国志」があるというのが分かる構成になっている。本書の一番の特徴はその点にあるだろう。
「研究動向篇」は近年の「歴史」「思想・宗教」「文学」各ジャンルの研究動向を解説し、研究論文を紹介する。著書の専門の歴史に重きが置かれているのはやむを得ないが、三国時代の思想・文学の研究動向もおさえることができるので重宝する。
なお、本書の研究動向、研究目録ともに前著とも言うべき『三国志研究要覧』のものに及ばない。本書の対象は、一般の三国志ファン・大学学部生であって、『三国志研究要覧』のレベルは大学院修士課程のレベルであると言えるだろう。
三国志を極める!
★★★★★
この本は、10年前ぐらいに出版された『三国志研究要覧』のリニューアル最新版です。最近、三国志学会も設立され、新たにこの三国志の研究入門書が刊行されました。内容は、最新の研究事情や、三国志の研究の仕方などが懇切丁寧に解説されています。また、後半には、著者が厳選した三国志の研究論文の一覧も記載されているので、図書館などで論文を手に入れやすいでしょう。三国志を研究するこれからの人、現在研究している人もおススメの研究の手引きの書です。