ユーモアあります、
★★★☆☆
ご自分を「瞬間湯沸かし器」というあだ名を戴いていることをいきなり告白!かなり砕けた口調で語られる阿川さんから見た「大人の見識」とはいかなるものか?を語った本ですが、これが小説とは全然違う味わいで面白かったです。しかし面白いユーモアある方です!
タイトルが「大人の見識」ときておいて、序文がいきなり「老人の不見識」ですよ、ユーモアあります(笑)最も、かなり深い洞察に満ちた言葉がたくさん出てくるので油断なりませんし、事実頷ける表現が大変多かったです、「戦争中、ある意味日本人は思考停止な状態にありましたが、戦後も逆のかたちで思考停止をやってる」とか、なかなか味わい深いです。
日本人というものに対する見識から始まって、「英国」、「海軍」、「天皇」、「ノブレス・オブリージュ」、そして儒教としての「孔子」への見解、どれも面白く分かり易く、そして私の多少なりとも知識のある人物(川路聖謨、内田百閨jや事柄(精神のフレキシビリティ)に対しての言及に妙な繋がりを感じられてそこも面白かったです、今読む「縁」というものを感じます。
かなり腹の据わった書き方をされてますし、ちょっと語られることの無かったものへの言及にも、センスと落ち着きがあり、最近の流れ(単純に右傾化とは言いがたいのですが、私は単なる揺れ戻しに過ぎないのではないか?と。ただ揺れ戻しすぎも嫌なんですが、なんでも極端でどうも・・・)に対する評価も頷けました。ただ、なんでもそうですが、直接その頃を生きられていた方の意見、見聞きしているその「時代」の空気を知っているということは非常に大きく、その上での判断には説得力があります。なかなか簡単に「瞬間湯沸かし器」とは言えない文章(もしかすると聞き取り?口語調ですし)ではないかと思います。特に私は海軍のユーモアを解する部分に感銘を受けました。海軍にもいろいろありましょうけれど。その部分をあえてサイレント・アーミーについて文章に残す阿川さんの公平性には、特に素晴らしく思いました。
ノブレス・オブリージュについて言えば、無いと困りますし、あった方が良いのは当然なんですが、そのことを単純に「プライド」や「自尊心」に強く結びつけるのもどうかと思います。あくまで最低必要条件であり、礼儀であり、また声高に叫ばれる程の物でもないルールのようなものではないか?と。選民意識で低きものへの、という意識が透けるのはそれはただ単にエゴであって(エゴであっても無いよりはましですが)、エゴを越えた普通のもの、マナーの一部に出来るか否かが、無粋にならないかどうかの境目なのではないか?と思います。
そして、細かな見識の積み重ねが、小さな流れが集まって大河になるように、最終的に儒教というものに流れ込むのが、私にはある意味新鮮で良かったです。
割合さらりと読める割には、かなり重い言葉もあり、しかしユーモアある文章で、とても面白かったです、見識を深めたい、と言う方にオススメ致します。
海軍流
★★★★★
元海軍軍人であり、作家である作者の書いた大人の見識、知恵を書いた本です。作者の海軍への傾倒は強く、その基には、英国海軍の精神への心酔に基づいていると思われます。海軍時代のユーモアあふれる様々なエピソードが語られていて、とても面白いです。がちがちの知識ではなく、柔軟性や知恵、人間としての品位などが書かれています。帝国海軍の意義はともかくとして、著者の言う通り、その精神には学ぶところが多いと思います。大人としての生き方、作法を知る上で参考になる本だと思います。
それを言っちゃあ…
★★☆☆☆
高校生の頃から阿川氏の作品が好きで読んできた。氏はかねてから、対米戦争は『やるべからざるべきいくさ』だった、何故あんな無謀ないくさをしたのかと書いてこられている。この考えはこの本のなかでも重ねて言っておられるが、第五章中の「相手の挑発に乗せられたのだとしても、そりゃ乗った方が悪い」の部分には愕然とした。阿川さん、それを言っちゃあおしまいよ、せめて自分が楯となってこの国を護ろう、そう覚悟を決めて散っていったあなたと同年代の人達が浮かばれまいに……正直、幻滅しました。戦争に負けるもんじゃないですな。そう痛感した一冊。
日本海軍という悪魔。
★☆☆☆☆
「山本五十六と寺内光政は、愚将だった」を読むと、
陸軍は悪玉、海軍は善玉という、あんちょこな
定義に疑問が。まあそうしないと、言論界で
生きていけないいんでしょうかね。
タイトルの意味
★★★★★
このタイトルで出版した際の影響力を著者は知っていたと思う。
最後のページの漢字1文字には、
「この本も鵜呑みにするな。自分でゆっくり考えなさい」
という著者の思いが込められているのでは。
そうすることが「大人の見識」だと。
阿川弘之という名前、5ページ程度でも他の新書1冊分に
匹敵する含蓄のある内容、それらに圧倒されながら読みましたが、
最後の1ページに救われました。