あまりにも有名な書聖・王羲之「蘭亭叙」。本書は臨書学習に主眼を置いた本だが、読んでも、ながめるだけでも楽しめる。蘭亭叙の真筆は唐の太宗が自分の墓に持って行っていったため失われたが、人手による精緻なコピー、そしてさらにそのコピーが多数あるおかげで、その書の真髄を我々は知ることができる。

本書は、王羲之その人と蘭亭叙の概説３頁、原本図版４頁、蘭亭叙の特徴的な筆法等の解説１４頁、臨書作例４４頁（見開きの右側に半紙１枚６字、左側に対応する原典図版中の字と解説を掲げる）、王羲之と蘭亭叙に関する３コラム、そして半紙による臨書学習後の次段階として条幅臨書・倣書作例４頁から構成される。

原本図版として神韻半印本が原寸大で掲載され、臨書作例左側頁の原典図版中の文字も原寸。よってまさに「神」と評したくなる蘭亭叙の全体、そして部分をじっくり眺めることができる。編者による臨書例も王羲之の筆の特徴・勢いをよく伝えている。王羲之「蘭亭叙」が何故二千年近くも書の最高峰であり続けるかがよくわかる本である。