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現代ドイツ―統一後の知的軌跡 (岩波新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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ドイツ統一後の思想史 ★★★★★
ドイツ統一後の知識人の文化的・社会的・政治的論争がバランスよくまとめられている。
著者のリベラル左派に対する好意的な態度が明確に示されているものの、それに反する思想・主張に関してもその論旨の展開を丁寧に検討している姿勢に好感が持てた。
政治史はしばしば合理性・合目的性の観点から解釈し語られるが、本書はそこに新たな視点を与えてくれる、非常に示唆に富んだものである。
遠くからの眺め ★★★★☆
吉本隆明の言説を今の雑誌の対談やインタビュー、コラムなどからだけで理解しようとすればなかなかにやっかいな事になるのと同様に、ハーバーマスの言説も表面をナゾッタだけでは捉えきれない事が多いのではないだろうか。そのハーバーマスの政治的な発言を軸に、統一後のドイツにおける政治的思潮を浮き彫りにしたものが本書。

もともと彼は、戦前にスターリンや社民、共産党、ファッショ勢力と対峙しつづけて戦中はアメリカに亡命し、戦後帰還して、そのすべてからエキスを取ろうとした?フランクフルト学派出身なものだから、ちょと欲張りなところがある。そして、統一後のドイツにおいても積極的に政治的な発言も続け、イラク戦争の勃発時にはヨーロッパ知識人のネットワークを駆使して、各国の中心的な新聞に著名な知識人による戦争に否定的な投稿を指揮した、とある。

著者は「世界市民」とでも言った立場から言説を続けるハーバーマスに好意的な視線を送りつつ、リベラル左派や「転向」していくかつての左派達の動向、ネオナチ、保守的政治家、市井の人々の抗議運動をユーゴ内戦などの事件を軸に網羅的に記述していく。そしてEUの有り様に信頼を置き、しだいに変容しつづけているドイツの状況を、徐々にEU内のひとつの地方になりつつあるという視点で書き終えている。しかし、それは同時にEUのドイツ化とでも呼ぶべき事態でもあるとも述べている。
思想家の言説 ★☆☆☆☆
現代ドイツにおける知識人の言説のみを検討した書物です。その点前著とは
趣きが大分異なることに注意が必要です。実際思想家の発言も網羅的には
集められていないのでかなりかたよったものになっているのは事実です。
前著を読まれてない方は、まずそちらを先に読んでから取り組むことを
おすすめします。
アウトプットの背後にあるもの ★★★☆☆
 
「国際政治における決定事項を判断する際、その背後で交わされる議論、
あるいはその組み立てを見ていないと理解を誤る」と述べる筆者は、
両独統一、新国籍法、コソボ空爆などの諸事項を取り上げたうえで、
その背後にあった(ドイツ)知識人たちの議論を中立的に紹介している。

因) EUによる旧ユーゴからのクロアチア、スロヴェニアの独立承認
果) ユーゴ内戦の悪化ならびにドイツ外相の辞任

例えば上記のような因と果について、
なぜドイツ主導による性急な承認を進めざるを得なかったのか、
そして内戦悪化の背景にはどのような「誤り」があったのか、
という部分を事実と往時の議論を元に検証するといった具合である。

本書は著者も述べるとおり思想の次元に大きく関わる内容となっており、
「歴史の検証」そのものが主たる目的ではない点に注意が必要である。

その意味では戦後ドイツ史をある程度理解したうえで本書に取り組めば、
「後世の視点からみる歴史」へ「往時の議論背景」という新たなが視座が加わり、
読者の知識幅も大きく広がることにつながるのではないだろうか。
ドイツにおける"歴史の見直し"とハーバーマス ★★★★★
単純化して云えば、この本の構成はドイツ統一後の文化的・社会的論争をハーバーマスの表明した懸念を中心に見ていく、というもの。三島さんによると、ドイツにおけるリベラル・レフトの特長はハーバーマスも含めてアメリカ寄りであるということ。そこが他のヨーロッパの知識人たちとは異なる点だというが、なるほどと思った。ハーバーマスが「生活水準の格差ラインをエルベ河からオーデル=ナイセ河に移すだけ」と評した統一は進むが、「東の建設 Aufbau Ost」に1兆マルク(60〜70兆円)をつぎ込んでも東ドイツの失業問題は減らず、現在でも毎年600億ユーロ(8兆4000億円)がたいした効果もないのに旧東ドイツ地区に垂れ流されているという(p.40)。そして、一部を除いて上向かない経済は、東ドイツにもネオナチを生みだし、カネはドイツ人にために使え!ということで、トルコ系や他の地域からの難民への襲撃事件が発生する。

 スキンヘッズは主としてドイツ駐留イギリス軍の兵士を経由してドイツに流れ込み、「リベラルかつ適度にレフトであることは、皮肉にも社会的上昇の資格証明ともなっていた」社会の知的・文化的体制に反抗するという構図も生まれてくる。94年に定年退官するときフランクフルト大学では「ハーバーマスよ、お前はこの国でネーションという言葉を悪い言葉にして、この国をお前好みに合わせたけど、もう終わり。お前の好みの大学ももうなくなるよ。大学は右翼の巣になるよ」というビラがまかれたという(p.81-)。そしてイスラエルに対しても「パレスチナ人迫害をやっているからお互いさまだ」というような発言を有力政治家メレマンなども行うようになっていった(p.198-)という。