既存の英文法の不完全性が気になる人に
★★★★★
副詞は形容詞、動詞、副詞を修飾すると既存の文法書(学校で習う文法書)には書いてある。
しかし実際の英文を見ればわかるように、名詞を修飾することもあればBe動詞の補語になることもある。
助動詞willは未来を表すと学校文法では習う。しかし過去、現在に対する予想などで
使われることも時にあることは英語を勉強している過程で気づくだろう。
SVOCのCには名詞、形容詞が来ると学校文法では習う。それではI regard him as a genius.(私は彼を天才とみなす)は
はSVOC以外(例えばSVO)に分類されるのだろうか?
中学校の英語の授業で現在完了の用法として完了、結果、経験、継続の4つの用法があると習う。
しかし「完了と結果は同じものではないか?ひとつにまとめたほうがよいのでは?」「経験も完了、結果と似ているのではないか?
これもあわせてひとつにまとめるべきではないか?」などと感じる人も多いだろう。
既存の英文法書が現実の英語を100%とらえきれていないため「どうも英語とはすっきりしないものだ」「科学の世界のほうがすっきりしていて美しい」と感じて英語学習の意欲をなくす人もいるのだろう。
その一方で「文法とは言葉が生まれた後に、言葉のもつ特性をまとめたものであり、
決して文法が先にあり、それに合わせる形で言葉が存在するわけではない。
だから現実の言葉と文法の間に違いがあるのは当たり前だ。気にしない!気にしない!」
といった強い信念を持ち、バリバリ英語学習をすすめられる人がいるのも事実である。そのようなタイプの人には本書は
まったくお薦めできない。時間と金の無駄使いである。
本書は既存の英文法が説明しきれていない部分に光をあて
英語とはどういうものかを厳密に説明しようと試みている。
そして「どうも英語とはすっきりしないものだ」「科学の世界のほうがすっきりしていて美しい」などと感じ
英語に対する興味が失われがちな人は本書を読むことによってなんらかの勇気、安心感を得るに違いない。
既存の文法を批判している部分も多いため、既存の文法が頭に入っていないと何を言っているのか理解できない。
よって高校生が読むような書物ではない。
※なお本書はペーパーバックではない。
「標準英語」の文法
★★★★☆
とりあえず既存の英文法をこなした人向けです。文法用語・分類も最初から定義し直す、と最初に書いてあるのですが、そうではありません。既存「規範文法」(日本の学校英文法と読み替えても言い)用語と知識を前提として書かれている部分も多々あります。
この新しい英文法は、「規範英文法」に代わるべきものとして考究されています。言い換えると、主として、「形」のルールを追求したものです。本書では「記述的英文法」と名乗っています。「規範的英文法」が生半可な観察と思考で人工的に作られたルールであることを例証し、実例によってそれらの観念的なルールはないものが多々あることを証明します。その上で、実際にある構文ルールはこういうものだ、というのが本書です。
「生成英文法」というのは、漢字から受けるイメージと違って、記号暗号の構文規則のようなものです。意味論的な構文ダイナミズムではありません。
内容は、事実に基づいているので、正しい規則だと感じられました。
ただし、概念および用語が抽象度が高いため、英語学習のためにはこのままでは使いづらそうな気がします。
用例等がおもしろく、英語の正しい構文ルールを知るには良書だと感じました。
「英文の原理的解明」を目指している点がよい
★★★★☆
2004年度「アメリカ言語学会レナード・ブルームフィールド賞(Linguistic Society of America,
Leonard Bloomfield Book Award)」を受賞した大著『The Cambridge Grammar of the English
Language』の著者陣が学習者向け英文法解説書を出しました。著者らの理論的バックボーンは
生成文法ですが、「英文の原理的解明」がなされており大いに参考になるはずです。
ただし、学習者向けの英文法書と異なり、説明に使われている用語体系(語彙)になじむのは
ちょっと苦労するかもしれません。一度店頭で見てからのほうがよいと思います。
逆に、英語学、言語学畑の人には大著『The Cambridge Grammar of the English
Language』への架け橋として最適でしょう。