「声を聞かせて」
★★★★★
時は昭和58年。
東北の田舎町に住む高校3年生は、
2年前に見た「田園コロシアム」でチャゲ&飛鳥のファンになり
受験勉強もそこそこに、ギター片手に大声で歌を歌っていた。
その年の9月30日。
代々木オリンピックプール(当時はそんな呼び方をしていたような気がする)で
初めてコンサートが開かれるということで、新幹線で会場に駆け付けた。
「アリーナの下はプールです。サメが2匹放してあります」
この日もチャゲのMCは冴えわたっていた。
…やがてコンサートも終盤。「ひとり咲き」から続く最後の曲は
今回のコンサートのために作られたという「声を聞かせて」。
チャゲと飛鳥の歌声に答える会場の声。渦巻く歓声。…少年は確かにその声の中にいた。
コンサートがこのまま終わらないでほしいと思ったのはこの日がはじめてだった。