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パレオマニア 大英博物館からの13の旅 (集英社文庫)

価格: ¥900
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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きっと大英博物館に通いたくなる ★★★★☆
大英博物館の展示品の中から気に入った品を選び、もともとその品物があった場所を訪れるというテーマの旅。
訪問国は、ギリシャ、エジプト、インド、イラン、カナダ、イギリス、カンボジア、ベトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリアの13カ国。
具体的な旅の時期は不明だが、作者後書きの日付が2004年4月1日となっているので、全てそれ以前の旅の記録ということになろう。現在は、その執筆当時と比べて、諸々の状況が様変わりしたであろう国も見る受けられる。
後書きを加えず521ページの長編だが、意外にすらすらと読むことが出来た。
ただ、ある程度、歴史とその土地に関する知識を有している方でなければ読みにくい部分もあろうかとは思う。
意外に興味を惹かれたのは、最後近くの大英博物館のおこりについて、執筆された章である。こんな事に今まで興味を持ったことがなかったので、この事に関する知識もなく、恥ずかしながら勉強させていただいた。
時と場所を超えた様々な文明への旅、思索の軌跡にわくわくしました ★★★★★
 大英博物館の展示品の中から好きなものを選び、何百年、何千年前にその品が作られた土地を訪れる紀行文集。著者の分身であるひとりの「男」が、大英博物館を基点に世界のあちこちに出かけ、収蔵品の生まれ故郷に赴いて、古代文明の姿や都市の在りようを見つめ、思索するという体裁になっています。

 時と場所を超えて、知的好奇心の世界へといざなってくれる一冊ですね。本文庫に没頭していたここ二、三日間、古代から現代にわたって、世界の様々な場所へと、無形の存在となって精神の旅、思索の旅をした、そんな心持ちになりました。第一級のスリリングな興奮を味わうことができて、わくわくしました。

 「男」が訪れた国は、全部で十三。ギリシャ、エジプト、インド、イラン、カナダ、イギリス、カンボディア、ヴェトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリア。
 とりわけ、次の四つの旅が印象に残ります。

◆アンコール・ワットの遺跡への旅が、人間の意志と自然との戦いをめぐる思索へと広がる『カンボディア篇』。 ◆隣の韓国と日本で共通する点、違っている点の指摘が興味深かった『韓国篇』。 ◆メソアメリカ文明の終末観の異形、その世界観の異様さに魅惑された『メキシコ篇』。 ◆物質から解放され、自由な精神性を獲得したアボリジニの文化、芸術に心惹かれた『オーストラリア篇』。

 手元に置いて見てみたいなあと最も強く感じた展示品は、今から四千年以上前の紀元前2350年頃、トルコ(当時は、アナトリア)の遺跡から出土した牡牛の像。大英博物館の第53室に展示されている逸品。銀の鋳物(いもの)で出来ているのですが、牛というより、馬に角が生えたようなエレガントな立ち姿の像。格別、後ろに反り返った二本の角の曲線が素敵だなあと。
収奪か、保護か ★★★★★
大英博物館の収蔵品に触発されて、それが発見された場所へ出かける。
なんてうらやましい企画でしょう。
そうして完成されたこの本は、優れた紀行文であり、また優れた文明論でもあります。
発掘品を大英博物館に集めることは確かに収奪と呼ばれる行為かもしれない。
しかし、その時大英博物館に収められず、ブラックマーケットへ流出した遺物や、
保管管理の行き届かない地元の小さな博物館に収められてその国の内戦で略奪された例だってある。
それならば、政情の安定した国の、多くの専門家が修復・保管に携わり、世界中の人々に紹介されうる博物館に収められた品々は幸運であったとは言えないだろうか。
だが、そうした理屈は結局は先進国のエゴなのか。
大英博物館に収蔵品のないアボリジニの国で悟るこの紀行は、多くのことを考えさせられる作品です。
コンセプトはいいけれど…。 ★★★☆☆
~池澤夏樹さんの作品は好きでよく読むし、博物館で見た収蔵品で心ひかれたもののルーツを辿るというコンセプトは面白いのだが、この本が「男は…」という三人称で書かれているのが最後までひっかかって、話に入りこめなかった。なぜ「私は…」という一人称ではいけなかったのか。一人称で書かれたエッセイ/紀行文として読んだ方が、すんなりと楽しめたと思う~~。訪れた場所の写真まで載っているのだから、この話が実際の旅に基づいているのは明白だと思うのだが…。文明や文化に対するちょっとナイーブともとれる感想を一人称で書くのは気がひけたのだろうか、と思ってしまった。
それでも、気に入った収蔵品のバックグラウンドを丁寧に追って行く過程はとても興味深く、こんな旅ができたらいいのに、と思わせる。中~~国や日本も含め、もっといろいろな土地を取り上げて欲しかったとも思う。~
理想の旅 ★★★★★
あなたが旅に行って、必ず訪れるのはどこですか?
博物館・美術館はかかせないという人には、この本はオススメ。
私は、旅をすると、どうしても博物館・美術館に行ってしまう。
そして展示物1つ1つをじっくりとながめ、その展示物の歴史、作られた場所などに思いをはせ、時を過ごす。

そんな時、実際に作られた土地を訪ねたいという思いにとらわれたことは、1度や2度ではない。
そういう意味で、この本の旅は私にとって理想の旅だ。

この本で旅するのは「男」だ。
著者の分身であり、われわれの分身なのかもしれない。
大英博物館という、あまりにも巨大で、たくさんの収蔵品がつまっている場所で、

「男」は小さな美しい展示物に目を留めては、思索にふける。
それが作られた地を実際に訪れ、作った人や空気を感じ、さらなる思いをはせる。

なかなか、実際にこんな贅沢な旅はできないだろう。
この本を読めば、頭の中の知的な旅を味わうことができる。少々、高価な本ではあるけれど、私にとっては読んでよかった本の一冊だ。