8000円は安い!
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私はこれまで、一人の小説家の一登場人物についてここまで詳細に書かれた物を知りません。 私の好きな明智小五郎役は大映ドラマ「怪人二十面相」の南條豊さんなんですが、これまでに出版された乱歩・明智本の中では単に明智小五郎を演じた役者として名前が記載されるのみでした。
ところがこの本には、番組の解説に加え各回のサブタイトル・ゲスト・スタッフまで記載してあります。
これがすべての舞台・映画・テレビ・ラジオを網羅してあります。
また、 私は天知茂の明智小五郎はあまり好きではないのですが、「我らが明智小五郎!天知茂物語」は、一人の役者人生の読み物として十分読み応えがありました。
他にも・・・と挙げているとキリがないのでやめますが、とにかくすごい!
著者の偉業には拍手です!!
あなたの好きな明智小五郎が絶対あります。
8000円なんて、この充実した内容からすれば安い、安い!! 絶対に、買いです♪
極め付きの1冊
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江戸川乱歩が生み出した“探偵の中の名探偵”明智小五郎について、原作はもとより、映画・テレビ・ラジオ・舞台その他、ありとあらゆる媒体に取り上げられた記録を網羅した読み応えのある決定版。
特に、不世出の明智役者としてその名を刻む故・天知茂に関しては、「我らが明智小五郎!天知茂物語」として詳細な特集記事が組まれているほか、知られざるエピソード満載の美女シリーズ覚書なども嬉しいところだ。
子供のころに読んだ少年探偵団シリーズから、ドラマや音楽から、あるいは漫画から…出会いは様々なれど、読者が必ず懐かしいと感じる明智小五郎がそこにいる。そしてページをめくる毎に「こんなところにも!」と驚きに満ちた情報が待ち受けているはずである。
大乱歩展の開催もあり、早めに購入すべし
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編者の住田氏は以前からあちこちの乱歩サイトのBBSに時折顔を見せていた人で、本書の刊行も度々ほのめかされてきたがようやく実現に至った。
あらゆるメデイアに取り上げられた名探偵の全貌を俯瞰。勿論、聖典である乱歩原作にも充分頁が割かれ、光文社乱歩全集の注釈や『江戸川乱歩小説キーワード辞典』でおなじみ平山雄一氏「明智小五郎年代学」の復活やリライト少年もの事情まで、書誌データも細かく目配りがされているので、私のように原作以外はさして興味がないという人でも買って後悔はまずあるまい。
グラビア・図版を必要最低限に留め、1000頁近くにも亘る膨大な活字の情報量で読み応えがある。その割には3段組にするなど工夫があって読み易い。また144頁〜573頁までは頁両端に、分厚い本をコピーした時に写る小口の影をわざわざ印刷してある。(これって意図的な演出?)
編者は『戯曲アルセーヌ・ルパン』での良い仕事の通りルパン研究の人でもある。私個人としては、このご時勢大変とは思うが、不毛地帯と化しているルパン研究本や決定版ルパン全集の刊行に今後尽力してもらえたら嬉しい。同様に、本書のように乱歩研究本には良質で濃密なものが数多くあるのに、何故に横溝正史(金田一耕助)となると薄っぺらいミーハー・ビギナー向けしかないのか不思議でしょうがない。本書中唯一、正史研究家?浜田知明が「二十面相死亡説」について毒ついているコラムが浮いている。こういう人の揚げ足取りをする暇があったら『横溝正史研究』をはじめ一般商業誌における正史研究の充実に努力を払ってもらいたいと思うのは私だけではない筈。
最後に、このボリュームでは不可避な事ではあるけれど、ラジオドラマの出演者名などに明らかなミスがある。特に巻末の作品目録における初出誌挿絵画家のクレジットはボロボロなので、この辺に初めて接する方はご注意を。