会社法の従前の議論のまとめ
★★★★☆
商法の大改正以来、久しぶりに会社法が改正されそうだ。
法務省は法制審議会会社法部会にて議論を開始し、経産省もそれに意見を出している。
書名が「公開会社法を問う」なので、早大の上村教授が提唱している「公開会社法」への批判本かと思ったが、議論の対象は民主党が作成した「公開会社法(仮)の制定に向けて」。もっとも、上村教授は民主党に近いので、大きな違いはない。
しかし一読すると、単なる批判本ではなく、むしろ議論を通してこれまでの立法論や解釈論がよく分かる。
また、宍戸教授は法学者、柳川教授は経済学者なので、法学の考え方と経済学の考え方がよく分かる。
法制審の議論や日経新聞の可笑しなリークを鵜呑みにしないで、会社法の従前の議論を整理し、自分の頭であるべき会社法を考えたい人にはお勧めできる本である。
ただし、鼎談形式ゆえ、議論が錯綜している箇所があるので、腰を据えてじっくり読まないと頭に残らない。
ご注意を。
会社法の主要な論点を鋭く切る!
★★★★☆
「公開会社法って何?」と思って本書を手に取った方はとてもラッキーです。気鋭の会社法学者、経済学者、実務家が民主党の公開会社法を材料に、それだけにとどまらず、コーポレート・ガバナンスに関する深い洞察、親子上場やM&Aなど資本市場のあり方などについて鋭い議論を戦わせています。
たとえば、「なぜ普通株主だけが議決権を有するのか?(なぜ従業員などその会社により深くコミットしている人に議決権がないのか?)」という問いに対して、「本当に重要な従業員だと、寝転がられてしまうと会社は困る。しかし、(株主は)お金を出してしまえばおしまいなので、株主が「もう協力しないよ」と言っても会社は困らない。したがって、株主は交渉力が弱く、法的な手当てをする必要がある(議決権を与える)」といった議論がされています。これって斬新じゃありませんか?!
鼎談形式で肩のこらない読み物になっているのもマル。星4つにしたのはさらにクオリティの高い続編を期待して...