で、そんな人たちの世界を垣間見せてくれたのがこの本です。
この本は、考古学の現場の雰囲気が満載なのがいいです。
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ちょうど、その日、現場からもどり、挨拶に教授の部屋に入ろうとした時、
教授は一枚の紙を片手に持ちながら外へ出てこられた。(中略)
その顔は、もう笑みでいっぱいだった。(中略)
私は教授のこんな楽しそうな顔を見たのは初めてだった。
何ごとが起きたのだろう。
教授は手に持っていた紙を見せてくださった。
それには楔形文字がびっしり書きこまれていた。(中略)
教授は微笑みながら、ある箇所を指さされた。(中略)
タピッガの町という意味である。
教授は文書の説明をしてくださった。
そしてなんとも気軽に
「このタピッガがマシャットホユックの古代名ですよ」といわれた。
私は一瞬、自分の耳をうたがった。
確かに、今、教授はいわれたはずである。
マシャットホユックの古代名がタピッガであると。
ヒッタイト帝国の遺跡のなかで古代名の判明している場所は極めて少ないし、
発掘の最中の遺跡の古代名がわかるなどということは奇跡に近いのである。
たいへんな発見である。
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こういう世界もあるんだなあ。
いつもとは違うジャンルの本に、無理して手を出して良かった・・・。
ただ考古学素人の私が疑問に思ったのは最後に他の学者が既にヒッタイトの遺跡から製鉄跡を掘り出しているのに何故著者の目に触れ、耳に聞こえてこなかったのだろうかということである。何故か腑に落ちない結末であった。