良質なファンタジー
★★★★☆
指輪物語やゲド戦記と同じく、良質なファンタジーの一つだと思う。
聖杯やアーサー王伝説を含めたイギリスの伝承を取り込んでいるのも面白い。
夢中になったあの頃
★★★★★
確か、初めて読んだのは中1の時だった筈。これからの人生に対して不安でいっぱい、何歳で死ぬかもわからない人生の長さが5万年位ありそうに感じて恐れおののいていた私の精神状態にぴったりフィットした物語で、大好きだった。高校の図書館にもあって再読、大人になっても市立図書館から借りて読み、最後はシリーズ全巻買い揃え、今も手元にある(旧版だけど)。特殊能力者の一群が、闇の勢力と数千年に渡る暗闘を繰り広げる中、主人公はその闘いを終わらせる為に“選ばれた者”・・・最近のアニメやラノベじゃ珍しくも何ともない、現実と折り合えない思春期の子供の自尊心を擽る設定ながら、近年のオタク向けコンテンツにはない厳しさのあるストーリーだと、つい最近読み直して気付く。子供を甘やかさない姿勢や、子供の純真さ“だけ”では勝利を“得られない”(←これは重要!)あたりが、イギリスのヤングアダルト作品ならでは、という感じ。後書きで訳者が挙げている基本設定自体の欠点も含めて、マイナーながらも長く読み継がれてきた理由は、前述した、どこか日本人好みの物語の枠組みのせいかもしれない。因みに原作ファンは、映画化作品は見ないほうが良い。ハリー・ポッターブームが残した悪しき遺産以外の何物でもない、ガッカリ映画だから。
冷静な作品
★★★★☆
かなり前に旧版も読んでいたので今また改訳新版を読んだらどうなのか?と、内容に関する一抹の不安もあったのだが、それは心配するに及ばなかった。
シンプルな文章に慣れていると多少読みにくいと感じられるかもしれないところと、伏線を完全に生かせなかったような面もあるものの、シリーズを通して気品のある話だと思う。
大義名分的なにおいや、アクションを見せる為の戦闘シーンなどはここには無い。
ゆったりと魔法に絡め取られていくような味わいがある。
それはただ牧歌的というものではなく、あくまでも法則性を持った理性的な視点で、既に世に出されて30年も経つような作品というのに古臭くない。
むしろ今こそ、こういうしっかりした設定を根底に構築されてつくられたものを見習った方がいいのかもしれない。
(甘いところは無いとは言わないけれど)
シリーズ1巻に当たる”光のー”はタイトルのごとくアイテムものの要素が大きいが、これ以降も、さりげなく散らばる作者の光と闇と人間に対する言葉にはっとさせられる。
よく気をつけないと見逃してしまうかもしれないけれど、それにひっかかるようならば続刊も読んで下さい!と思う。
特に、2巻目の”緑のー”までは比較的抑え気味に話は進むが、3巻目の”灰色のー”は私としては大好きな巻でお薦め!!!
ヤング・アダルト向けの素敵なファンタジー
★★★★☆
映画化されると言うことで、読んでみる気になった本です。
全体的な印象としての第一感は、「ゲド戦記」の影響を受けているのかなというものでした。
七男坊の末っ子ウィルが主人公です。
11歳の誕生日を迎えた彼が、思いも寄らない「使命」を負う人間であることを知ります。それは、〈古老〉と言って〈闇〉と闘うというものです。
全世界を支配しようとする〈闇〉と、それを阻止しようとする〈光〉の戦いです。彼は、その最初の仕事として、六つのしるし(木、水、火、石、青銅、鉄)を探し当て、それを繋ぐことです。
この探索の過程とそこで起こる〈闇〉の妨害、更にはウィルを我がものとしようとする出来事が、淡々と語られて行きます。その一方で、〈闇〉の攻撃は豪雪や嵐の形で人間社会を取り込もうとします。
第一巻の「光の六つのしるし」では、取りあえず〈闇〉を撃退しましたが、第二巻以降では、又〈闇〉の巻き返しがあるのでしょう。
楽しみです。