日本のM&A
★★★★☆
日本のM&Aとそれを取り巻く環境についての論文を一冊にまとめたもの。
今まで教科書で学んできたことやケーススタディーの内容と言えば、ほとんど欧米でのM&Aについてだったので、会社法制も税制も違う日本でのM&Aについては通常のマスコミ報道やネットで得られる情報程度しか知らない状態だった。その点、専門家がある程度アカデミックに日本のM&Aの現状を書いたこの本は貴重だった。
取り上げてある事例は、北越製紙に対する王子製紙のTOBや村上ファンドによる買収など。また、日本に特徴的な『株式持ち合い』が敵対的買収に与える影響についても書かれている。
制度の整備不足や株主の未成熟から日本に成熟したM&Aの土壌が育っていないとの批判もあれば、必ずしもM&Aが有意なリターンをあげられていないとするイベントスタディーによる実証研究もあってバランスがとれている。
ただし、いかにも論文調であまり読みやすくない章もあり。