ロマン溢れる京都の近代建築物の数々
★★★★★
近代都市として発達した京都は、大正ロマンを感じさせる建造物が多く残っています。幸い戦災にも合いませんでしたので、建築当時そのままの姿で建っています。
本書は、日本で最初に電車を走らせたハイカラな街でもある京都のいたる所に個性をはなっている大正ロマンを感じさせる81の建造物を知るためのガイドブックと言えるでしょう。
冒頭に紹介されている京都大学や同志社大学には、文化財の建物が点在していますし、平安女学院や府立第一高女であった鴨沂高校の本館などは風格が感じられます。有名な建築家ヴォーリズが設計した四条大橋南西詰にある東華菜館、同じく四条大橋北東詰のレストラン菊水はどちらも大正15年の建築で、現役でレストランとして使用しているのは建物冥利に尽きると思います。
本書の項目は、「三高と帝大」「女学生」「疏水」「職業婦人」「十六師団」「鉄道」「街の灯」「電車」「恋文」「教会」「活動写真」「文士」「月給取り」「役所」「成金と花街」「銀行」「哀愁のカフェー」「博覧会」「銭湯」「新聞」「ホテルとレストラン」「ファッション」「嗜好品」「抒情画家」「探検家」「劇場とデパート」「こどもたち」「町屋と文化住宅」「スペイン風邪」「女工と小僧さん」となっています。年表、建物一覧、地図、参考資料、著者紹介、プロフィール等が巻末に収められています。
遥か遠くに過ぎていった大正時代に思いを馳せる意味でも本書の値打ちはあるでしょう。観光客が訪れるような社寺仏閣の京都とは、一味も二味も違う姿がここには存在します。明治・大正・昭和と激動の時代を超えて多くの人に愛され、守られてきた建造物ばかりですので、本書片手に訪れてもらうのが一番でしょう。