楽しめました
★★★★★
毎週大がかりな脱税の手口が取り上げられ、金持ちっていうのは自分のお金を守るためにこんなことまでするのかとびっくりさせられました。世界が違いすぎる。
それに天才脱税コンサルタントのこれまた悲惨な過去の出来事。
「金にさわると手が汚れる」
共通するのはそういうことなのかもしれません。
現実に本当にあり得る話なのかもしれませんが、庶民には触れることのない世界を描いて、そこから端を発した不幸な出来事を色々な形で描いています。
その中にも救いがあり、江口洋介演じる春馬の娘は一時道を外してしまっても、受け入れてくれる愛情のおかげて軌道修正できました。
一方、arata演じる修二はありえたかもしれない希望を追い続けた結果、受け入れられずいつまでも悲しみを抱え続けることになる。受け入れてくれる別の希望もあったのにそれには背を向けてしまい、みすみす自分から不幸を呼び込んでいるようにも見える破滅型の人間といえます。
江口洋介にこうした役をやらせたら今のところ並ぶものがいないのかと思います。なんていうかただの正義漢という単純な人間像ではなく、人の内面のあらゆる部分を認めつつ、葛藤の末、それでもなお誠実な道を歩き続けようとする厚みを感じさせてくれます。
ARATAも切れ者で才気がありながらもナイーブさと繊細さゆえに踏み外しやすく、不幸を呼び寄せる破滅型の人物を、端正な容姿とスマートな振る舞い、そして多彩な顔や声の表情で視聴者の共感を呼ぶ演技を見せてくれました。
「ハゲタカ」の鷲津も「チェイス」の修二も大胆な手口を用いましたが、その目的、意義、得たものは大きく違いますね。
脚本も役者も演出も音楽もすべてが卓越した出来栄えでしっかりと調和が取れてすばらしい作品に仕上がっています。こういう作品をたくさん見たいですね。
夜通し鑑賞
★★★★★
最近、注目のARATAを観たくて購入
最初の一枚だけ観るはずが物語に飲み込まれて全部観終えたら朝の4時
あまりに切ない村雲の動機に胸を突かれ、ラストのトイレの中で初めて血の繋がりを思わせた場面が泣かせる
ハゲタカより感情移入しやすく話もよかった
民放が真似できない重いテーマのサスペンス・ドラマ 水野絵梨奈の演技が冴える
★★★★☆
この作品は単に脱税を摘発する国税査察官の活躍を描いた作品ではない。脱税の国際化、複雑化するスキームを描きながら国税査察官と脱税コンサルタントとの家族を交えた対決という重いテーマに挑んでいるところが魅力。その対決の構図は、第一話のラストシーンに強烈に描かれる。テレビの臨時番組で旅客機墜落事故を知り、テレビの前に立ち尽くし涙を流す娘・鈴子(水野絵梨奈)、その後ろでまともに立っておれず動揺する父親で査察官の春馬草輔(江口洋介)を斜めに撮る構図は最高に悲劇的。そして、同じニュースを見ながら自らの幸運に笑みを浮かべる脱税コンサルタント・村雲(ARATA)との対比は金融サスペンスとドラマの見事な融合だった。このシーンを観てしまうと最後まで観ずにはいられなくなってしまう。
素晴らしいのはドラマの展開ばかりではない。ほとんど1話にしか出ていない春馬草輔の妻を演じる木村多江の存在感。草輔と行く旅行に行けなくなることを告げられたシーンで凛としながらも動揺を隠せない演技が良い。この演技があるからか、2話以降の娘・鈴子の悲しみ、憎しみ、自責といった感情を水野絵梨奈が見事に演じ切れたのかもしれない。彼女の全編の表現力がこの作品に重みを与えていることは間違いないし、前半の春馬家が陥る崩壊の構図は彼女の演技なしでは語れない。
ただ、残念なのが後半の展開。檜山家の相続税の脱税スキームがあまりにも雑で、特に非合法に事故を発生させて株価を暴落させる展開は市場関係者からすると市場を甘く見た設定としか思えない(金融考証まずさが窺われる)。
とはいえ、後半の檜山家の過去の複雑な事情が前面に出て、村雲の狙いがわかってくるところはサスペンス色が前面に出て、ちょっと荒唐無稽な設定とも思えるかもしれないが、最後まで一気に観いってしまう。脱税と家族という重いテーマを描き切った民放では真似できない骨太ドラマであることは間違いない。
「ハゲタカ」以来の骨太ドラマ!!
★★★★★
さすがNHKです!
今までも「外事」とかありましたが、
この「チェイス」がやはり「ハゲタカ」と並ぶ社会派ドラマでしょう。
題材に国税をもってきたり、そのテーマに答える演技を見せた江口さん、
やはり脇役でも、奥田さんや中村さんなどがドラマに厚みを加えてます。
なんといっても麻生さんの妖艶な演技もファンとしては今までと一味違う一面が見れて楽しかったです。
で、一番ビックリしたのが、ARATAさんの村雲です。
冷静でキレる男でありながら過去に暗闇を持ち、でも復讐に燃える熱い一面と、
終盤人間味を垣間見せるなんともいえない演技!今後のARATAに注目ですね。
内容は、マルサVS脱税コンサルタントという一見難しそうなテーマでありながら、
その中に、登場人物の思惑や因縁が交差することによってドラマが生まれてきて、
たった6話でありながら非常に見ごたえのあるドラマでした。
話のテンポといい菊池さんの音楽がまた物語を盛り上げてきて、
どこをとっても手を抜かないしっかりした作りがNHKですね。
久々のヒットドラマでした!
愛する人間に使い捨ての道具にされた人間はどうなってしまうのか…。
★★★★★
オープニングのタイトルバック、青い水と赤い水が表裏一体で溶けていく様子は、そのまま江口洋介演じる査察捜査官、春間と脱税の天才、“カリブの手品師”村雲修二を演じるARATAにそのまま当てはまる。
劇中でも、人によっては暑苦しい、でも確実に温かい“兄ちゃん”な江口洋介の個性と、文字通り爬虫類のような冷血動物を思わせる風貌、そんな風貌に似合わず声に凄みがあるARATAの役者としての個性が存分に活かされている。
脱税の手口とそれに立ち向かう査察官の対決に終始した方がいいという人もいる。が、それだけでは飽きてしまう視聴者もいたと思う。このドラマの肝はやはり、村雲の義手に隠されたその、あまりにも暗く悲惨すぎる過去にある。
彼の今まで背負ってきた苦しみと、彼が金目的で飛行機を落とした(落ちる結果が予想されていた)事によって、妻を失い娘との絆も失いかけた春間の苦しみは最終回で表面化、激突する。
「あり得たかもしれない人生に希望を持ってしまう。人を苦しめるのはいつもそういう希望なんだ。欲しくて欲しくて眼を細めて見つめる希望の灯火なんだ…」
春間は憎しみを超えて自分の追っていた相手の事を初めて完全に理解し、思わぬ行動を取る。
「泣いた赤鬼の話を知ってるか。誰も悪くないのにどうしょうもない。俺もお前も泣いた赤鬼と同じだ。愛されたくて愛されたくて泣いた赤鬼だ。でも、生きるしかない。生きるしかないんだよ!」
この時の江口洋介の演技は思わず画面に向かって「熱いっ熱すぎる」と叫んでしまうぐらい感動的。
福山は「龍馬伝」で兄ちゃんは「土曜ドラマチェイス」だようっと同格なぐらい良い仕事してる。いい役者さんになったものである。
そして、訪れる物語の結末はあまりにも悲しすぎる。が、唯一春間にだけはその苦しみを理解してもらえ、残された彼の赤ん坊が「パパ」と口にし出す様子にはやはり、かすかな希望が感じられる。
菊池成孔さんのエンディングテーマ「退行」も母親の胎内にいる赤ん坊のイメージのような、退廃的で魅惑的、悲しみに満ちた、ドラマの本質を如実に表わした名曲。いつまでも耳に残ってあとを引く(惹く)。