軍国主義が台頭する昭和初期、新興財閥の伍代一族は軍部の中国大陸侵略に乗じて利を得るべく暗躍し続けていく。徹底抗戦する大陸側のパルチザンや、国内の左翼勢力、そして伍代一族内でも勢力拡大をめぐって確執が生じるなど、さまざまな人間たちがうごめき、さけび、すべてが戦争の渦の中へと巻き込まれていく。五味川純平の大河小説を巨匠・山本薩夫監督が合計9時間を越す長尺とオールスターキャストで堂々描いた戦争スペクタクル大作三部作。ここでは日本軍の行いをはっきり侵略と定義して、観る者すべてに問題提起を促しつつ、しかしあくまでもエンタテインメントの姿勢を崩すことのない超ド級の娯楽大作として屹立している。第3部『完結篇』では旧ソ連軍の協力を得て、ノモンハン事件の壮大かつ過酷な戦場を再現。およそ日本映画ではお目にかかれない圧倒的スケールで見るものを圧倒する。本DVDボックスには全三部作および出演者インタビューなどの特典ディスク、そして日本映画音楽の巨匠・佐藤勝による三部作のサウンドトラックCDを封入している。(増當竜也)
BOXセットでの購入がお薦め
★★★★★
やや値は張るが、購入するのであればやはり作品世界を味わい尽くすためにも(1)佐藤勝の手になる三部作を彩る見事な「メイン・タイトル」など全57曲を収録したサントラCDや特典DVD及び(2)制作秘話やスチール、人間関係図などを含む詳細なブックレットが付いている本BOX−SETを薦めたい。
当初、本作品は監督の構想では「全五部」、日活とのニギリでは「全四部」となっていたようである(ブックレット14〜15頁)。いずれにせよ、全三部を観終わっても、これだけの個性豊かな群像そして名優たちの演技(あるいは怪演)を通じ、脳裏に様々な登場人物の残像が浮かんでついぞ離れない。伍代由介(滝沢修)・喬介(芦田伸介)兄弟やその息女たち(浅丘ルリ子、吉永小百合、高橋悦史、北大路欣也)、標耕平(山本圭)、鴫田駒次郎(三国連太郎)、鴻珊子(岸田今日子)、高畠正典(高橋幸治)、服部達夫(加藤剛)、趙瑞芳(栗原小巻)、狩野温子(佐久間良子)などなど、彼らひとりびとりは一体どのような運命を辿ったのか。第四部そして第五部を観ることができない今となっては、ただただこれを頭の中で想像するしかないのが非常に残念である(寂しい思いがする)。
監督のアタマは真っ赤っか
★★★★☆
まあとにかくキャストがスゴい。よくもこれだけの面子を集められたものだと感心する。この映画を造ったおかげで日活は会社が傾いた、なんて話もあながち嘘でないかも。演技力のある役者さんたちばかりなので、映画としては面白かった。ただ、原作が五味川純平、その本の出版社が三一書房、そして映画の監督が山本薩夫、もうこれだけでどんな内容か想像できてしまう。案の定、中国共産党様のおっしゃることをそのまま映画にしたらこうなりました、と言わんばかりの真っ赤っか。普通の歴史観を持った人が観るとヘソで茶が湧くようなシーン満載。そういう意味でも面白い。
私たちの祖父は皆、莫迦だったのか?
★★★★★
テレビ放映で一度観たことがある。十代だったので内容が殆ど解らなかったが、漠然と、凄い映画だなぁ、と感じた。当時、戦闘場面・高橋英樹&浅丘ルリ子の愛・音楽にのめり込んだものだ。きっと、かなりカットされていたのだろう。今回のDVD-BOXのお陰で、以上に完璧に甦る!
そうか、思い出した!左翼の役が多かったイケメン。最近トレンディドラマによく出てくる、あのぶよぶよ小父さん。二人は山本圭だったのだ。時は残酷なり…
三國連太郎と佐藤浩市はやっぱり親子だ。顔は似てないが、体つきはそっくりだ。
十代の頃も今も、左翼の描き方について「偽善的」に思える。確かに日本軍は大陸を侵略していったが、何の考えもなしに外の物を盗っていったのだろうか?私たちの祖父は皆、莫迦だったのか?何のために死んでいったのか?
最後に、監督が山本學・圭兄弟の叔父とは知らなかった。
NO.28「せ」のつく元気になった邦画
★★★★☆
<元気コメント>
戦争へ向かってという大きな時代の波に流されながらも、その中で生き抜こうとする気力に元気がわいてきました。
圧倒的迫力
★★★★★
「人間の条件」と同じ原作者の小説の映画化だが、スケールはこちらの方が大きい。戦争の原因を1928年にまでさかのぼっているのはあるいは「東京裁判」を意識してのことかもしれない。よく善悪が分かれれすぐるとの評価を見かけるが、私はそんなことはないと思っている。話の中心の財閥の当主の伍代由介などはにわかに判じかねるキャラクター。滝沢修の存在感ある演技が物語に幅を持たせているように思う。左翼運動に関わる青年なんかはちょっと理想を追いかけているような感じはなくもない。それは山本薩夫監督の内面の何かがあるのかなと忖度してしまう。「工場のアイツ」という詩の朗読のシーンがあるが、あれは原作にはないもの。自分もかくありたかったということなのか。あの遊覧船のシーンはその昔助監督としてついていた「乙女ごころ三人姉妹」(1935)のシーンに何故か似ているような気がする。
この映画は日活の有り様が出演者で知ることができる。第1部は往年のスター(石原裕次郎や松原智恵子など)が顔をだしているが、完結篇には絵沢萌子、片桐夕子それに山科ゆりといったロマンポルノで活躍した女優が登場している。日活そのものの曲がり角を如実に表している。