レコーディングバンド?としての実力
★★★★★
そもそも、ライブで本領が発揮される彼らが発表するアルバムは、ある意味おまけなのだろうが、地底レコードからリリースされていた時代の彼らのアルバムには疾走感や猥雑さ、混沌といった言葉が似合っていた。そして、爆発的なエネルギーの放射も感じられた。
しかし、地底レコードを離れてから発表されたアルバムは、別のバンドかと思える程に(音)のお行儀が良くなったように感じていた。成熟という言葉が当てはまるのかもしれないが、少なくとも聴き手である僕に高揚感を与えてくれることはなかった。また、言葉は悪いが聴きながら“惰性”という言葉も浮かんでいたので、もうそろそろ一休みしたほうがいいのかもしれないとも思っていた。
注)自分自身が彼等の音楽に飽きたということではない。「渋祭」前後のアルバムは今でもしょっちゅう聴いている。
だから、この新作もあまり期待することなく購入した。
今まで以上に音のお行儀が良くなっていると感じた。そして、このお行儀の良さが彼等に対する自分の不満にもつながっていたのだが、ここまでくると「これはこれでいいんじゃないか」と結果的にヘビーローテーションの一枚となっている。
具体的にこのアルバムの音がここ数年のアルバムの音とどう違って更に行儀が良くなっているのかは上手く説明できない。ただ、バンド史上最長の録音時間を費やしてつくられたというこのアルバムはレコーディングバンド?としての渋さ知らズの実力を示すと同時に新たな展開を示した一枚なのかもしれない。