アナーキー・イン・ザ・大正
★★★★☆
日本最高のアナーキスト、大杉栄。「悪魔」と呼ばれた彼の半生が、実に生き生きと語られている。
彼の論文が何編かと、自叙伝が収められている。
この大杉の自叙伝を読んで驚いたのが、圧倒的な読みやすさである。
100年近く昔に書かれた文章なのに、まるで最近書かれた小説であるかのように、一息に読んでしまえるのである。古臭い比喩などが一切使われていないからなのだろうか。『坊ちゃん』のように、痛快であり、一読してたちまち彼のことを好きになってしまう。
自叙伝を読む限りでは、大杉とは、アナーキズムに染まるために生まれてきたような人物であると感じた。思想即行動、を彼はいたるところで説いているが、大杉にとってはあまりにもそれが当たり前であったのだろう。
実際この自叙伝は、1904年前後に書かれたもののようなので(一応、例の日陰茶屋事件についての文章も自叙伝には収められている)、それ以降の活躍については知ることができないのは残念。