言語学で楽しむ
★★★★☆
音声学には両唇閉鎖音というものがあり、「マ」や「パ」の音がそれにあたる。
両唇閉鎖音は発音しやすい音であり、
赤ん坊などは初めて話すとき、そのような音をよく発する。
この両唇閉鎖音が「ママ」や「パパ」という音を生み、
赤ん坊を世話する両親が、
自分達のことを言われていると勘違いして、
「ママ」や「パパ」という単語が両親を表す言葉になった。
英語には「肩こり」という言葉がないので、
「肩こり」という概念がない、というのは有名な話。
しかし、他言語には「肩こり」という言葉は存在し、
面白いことに、ドイツ語では「肩こり」を「カーター」という。
「カーター」はもともと「猫」という意味であり、
ドイツ語では、「肩がこっている」という状態を「肩に猫が乗っかっている」と表現するらしい。
ソシュールによれば、言葉はあることを順を追ってしか言えない。
例えば、「イヌ」という言葉を言おうとしたら、
「イ」と言った後に「ヌ」と言わなければならず、
「イヌ」を一瞬で表現することは出来ない。
さらに「イヌがその辺でネコを追いかけている」という現象も
絵で捉えれば一瞬だが、
言葉で表現しようとすると、順を追ってしか言えなくなる。
そういったもどかしさが言葉にはあるということ。
他にも、言語に関するトピックスが数多く散りばめられており、
言語学を楽しむためのエッセンスが凝縮されている。
短時間でさらっと読むことができ、内容も優しいので、
誰でも気軽に読むことができると思う。
新しいことはなにも含まれていない。こんなのでは、教授の魅力は伝わらない。
★★☆☆☆
田中克彦教授の著作をいままで全部読んできた私には、本書は、なにも新しいことは含まれていなかったので、たいへんつまらなく感じた。この程度では「闘う言語学者」と呼ばれている氏の魅力は伝わらない。
教授自身があとがきで、「彼らとの対談は、納得がいかないところもあったけど・・・」というようなことをお書きになっている。
氏の本を読んだことがない人、あるいは言語学に関心がなかった人が、手始めに手にとってみるのはいいかもしれない。
人間を規定するのは「コトバ」である。
★★★★☆
本著は、人間を規定するのは「言語」というコトバである、というのを社会言語学者の田中克彦氏の説明をベースに、爆笑問題のふたりがわかりやすく突っ込んだり、拡げたり・・・といった内容。
日常においいて何気なく使っている自分の文化における言語、言葉(語彙)などが、いかに人間を作り、そして規定し固定化しているか。
その効果にはどのようなことがあるのか・・・など、「コトバ」に対する意識が本著を読んでガラリと変わった。
正直、田中克彦教授の本だけを読んでてはこれほど平易な理解は得られなかったと思う。その点、他のシリーズと同様、爆笑問題の「引き出し方」はすごいなと思わされた。
中身は教養に足るだけの濃密なものなのに、とにかくわかりやすい。
それでいて、読後はとても大きな知識、叡智を得たという実感がある。
なかなかのオススメ本である。